1.日本の製造業界の現状は厳しい
まず、「現状は厳しい」といわれる日本の製造業界の現状を見ていきます。日本の製造業界の現状が厳しい背景には以下の4点があります。
- 国際的競争力が低下している
- 価格高騰のダメージを受けている
- コロナ禍の影響から抜け出せていない
- カーボンニュートラルへの対応に迫られている
それぞれ解説します。
国際的な競争力が低下している
製造業界の現状が厳しい理由の1つ目は、国際的な競争力の低下です。競争力低下の理由は新興国の台頭が挙げられます。
とくに、アジア諸国が安い人件費を武器に生産力をつけたため、日本は入れ替えサイクルが早い家電などの消費者製品において大きなダメージを受けています。
品質の高さや実績においては日本にまだ分がありますが、格差は確実に縮まっており、価格重視の商品選びをする消費者は日本製品から離れているのが現状です。
原材料価格の高騰によりダメージを受けている
製造業界の現状が厳しい理由の2つ目は、原材料価格の高騰によるダメージです。日本はものづくりの力は優れていますが、ものづくりに必要な原材料の多くは輸入に頼っています。
輸入依存度が高い原材料の代表例が、ガソリンなどの燃料やプラスチック製品の原材料でもある石油で、そのほとんどが輸入です。
日本の輸入先の90%以上は中東諸国でウクライナ紛争と直接関係がない地域ですが、紛争によってロシアやウクライナから石油を輸入していた国も中東諸国から原油を輸入するようになりました。
結果、需要増による価格高騰の影響を日本も受け、コストを商品価格に転嫁する値上げが続いています。
近年の値上げラッシュに疲弊した国民は購買力が低下しており、つくるのが大変、つくっても売れない製造業は苦しい状況に立たされているのです。
コロナ禍の影響から抜け出しきれていない
製造業界の現状が厳しい理由の3つ目は、コロナ禍の影響から抜け出せていない点です。
新型コロナウイルス感染症の猛威により人との接触が断たれた影響で、さまざまなサプライチェーンが分断されました。
サプライチェーンとは、原材料の調達から在庫管理・販売まで、製品が消費者に届くまでの一連の流れのことです。
2023年5月にインフルエンザと同等の第5類に分類され、以前のような危険性はないとされましたが、サプライチェーンは完全に回復しておらず、いまだに改善の見通しが立たない企業も多い状況となっています。
カーボンニュートラルへの対応を求められている
製造業界の現状が厳しい理由4つ目は、カーボンニュートラルへの対応を求められている点です。
カーボンニュートラルとは、2015年パリ協定で採択された、世界共通の地球温暖化対策のことであり、日本は2050年までに温室効果ガス、いわゆるCO2の排出量と吸収量を同じに近づけ、実質の排出量ゼロを目指すと宣言しています。
日本は宣言こそしたものの、発電のメインが火力発電であること、電気自動車の開発・普及が遅れていることなどから世界的な評価は低いです。
製造業界としても、現状の製造過程を変えるには時間と費用が必要で、現状維持も大変な状況で新たな設備等を準備する余裕は当然なく、先が見えない現状に疲弊しています。