1.インボイス制度の概要と対応
インボイス制度が導入されると、買い手(受領者)側が消費税の仕入れ税額控除を受けるためには、売り手(発行者)側が発行するインボイス(適格請求書)を受領し保存することが要件となります。
この場合、売り手(発行者)側は適格請求書発行事業者として登録していることが大前提です。なお消費税の申告納税をしている課税事業者でしか登録できないというルールとなります。
そのため免税事業者が売り手となる取引に関しては、必然的に買い手側が納める消費税の金額が増えるでしょう。そこで消費税をオンしない取引価格に改定してほしいと話し合うなど、今までの取引関係に影響が生じることが考えられます。
インボイス制度が導入される背景と経過措置
2019年10月1日 から実施されている消費税の軽減税率制度及び区分記載請求書等保存方式によって、軽減税率と標準税率という複数の税率が導入されているため、消費税の計算を行うことがやや複雑かつ煩雑です。
この問題を解消するために、消費税の仕入税額控除の金額を正しく計算していくために導入される制度がインボイス制度になります。つまり適格請求書(以下、インボイス)は、正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段です。
一定の事項が記載されていれば、請求書のほか納品書や領収書など書類の名称は問わずにインボイスとして運用できます。また相互に関連性が明確な複数の書類を合わせて、1つのインボイスとしての運用も可能です。
なお、免税事業者等の適格請求書発行事業者以外の事業者からの仕入れについて、制度開始後3年間は仕入税額控除の80%相当を控除、さらにその3年後は仕入税額控除の50%相当を控除できるという経過措置が設けられています。
押さえておきたい3つのポイント
インボイス制度の対応において、押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 発行者・受領者に分けて、整理しながら対応を進めていく
- 電子帳簿保存法のうち2024年の1月から書面での出力保存が認められなくなる電子取引という領域についてどのように対応していくか
- 経理実務の負担感が非常に増大することが想定される中、どのように対応していくか
以下は、インボイス制度の対応のポイントについてまとめたものです。
左右にスライドすると表を見ることができます
売り手(発行者)側の対応のポイント | 買い手(受領者)側の対応のポイント |
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特に会計システムが対応するかどうかの確認、請求書発行・請求書受領時の業務フローの再構築、あるいはこういった領域のシステムの導入も制度開始に向けての重要なポイントになります。
インボイス制度の注意点
現行の請求書である区分記載請求書に追加すべき項目は、適格請求書発行事業者として登録した後に付与される登録番号、正しい適用税率や税率ごとに区分した消費税額等です。
また端数処理のルールが変更になります。従来は商品単位(明細行ごと)に端数処理を行えました。インボイス制度導入後は、税率ごとに合計した対価の額に税率を乗じて消費税額を算出するルールに変更になります。Excelで請求書を発行しているケースでは、端数処理のルールを入れ替えて再度配布するようにしてください。
インボイス保存のルールは、基本的にすべての取引についてインボイスを収集する必要があります。インボイス制度においては、一部の特例を除き、インボイスを保存しなければ仕入税額控除ができないため注意が必要です。