1.電帳法(電子帳簿保存法)とは?
ここでは電子帳簿保存法(以下:電帳法)の概要や、法改正の背景について解説します。
電帳法とは?
電帳法とは、所得税法や法人税法で原則、紙での保存が義務付けられている取引情報を電磁的記録(電子データ)として保存することを認めるほか、電子的に授受した取引情報の保存義務などを定めた法律です。
令和3年度の税制改正において法改正等が行われ、電子的に帳簿書類を保存する手続き等について抜本的な見直しが行われました。
この法改正により、インターネット上での電子取引においても、その取引情報を出力した紙による保存が認められなくなります。電帳法は、従来はペーパーレス化に取り組みたい事業者が検討する法律でしたが、改正後はすべての事業者に関係してくる点に留意が必要です。
2021年12月27日に財務省令が改正され、2022年1月1日から最長2年間の電子取引情報については、一定の要件を満たせば出力した書面での保存が認められることになりました。猶予期間が終了する2024年1月1日以降は、令和3年度の税制改正に基づいた電子保存が必須となります。
なお国税関係帳簿・書類の電子データ保存・スキャナ保存を導入する際には、従来なら所轄税務署長へ事前申請し、承認を受ける必要がありました。法改正後は、この事前申請が不要になります。導入フローが簡素化されたことから、いつでも好きなタイミングで開始可能です。
電帳法改正の背景・目的
電帳法の改正の目的は、「経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性・記帳水準の向上」を推し進めることです。抜本的な見直しの背景には、次のような時代の流れの変化があります。
- 政府が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)
- スマートフォンの急速な普及がもたらした消費者行動の変化
- 新型コロナウイルスの影響によるリモートワーク・テレワークの増加
もともと国税関係帳簿や書類の保存は、書面が原則です。そこで整理・ファイリングの手間や文書保管スペースのコスト負担を軽減するため、電子データでの保存が特例として従来は認められていました。
ところがテレワーク普及により、紙出力前提では業務効率が落ちることが露呈したため、見直しが行われたというわけです。なお2023年にインボイス制度が開始されると、電子インボイスの導入によって事務処理のあり方がさらに大きく変わることが期待されています。