ホワイト物流推進運動が求められるようになった背景
ホワイト物流推進運動が求められている背景には、以下の3点が影響しているといわれています。
長時間労働かつ低賃金という物流業界の環境
厚生労働省が発表した令和4年賃金構造基本統計調査によると、年間労働時間は全産業平均が2,124時間だったのに対し、中小型トラックのドライバーで2,532時間、大型トラックのドライバーで2,580時間だったことがわかっています。また、年間収入額は全産業平均が499万円だったのに対し、中小型トラックのドライバーは438万円、大型トラックのドライバーが477万円でした。つまり、全産業平均と比べて長い労働時間でありながら、低賃金であることがわかります。
【出典】:令和4年賃金構造基本統計調査|厚生労働省(参照2024-04-08)
長時間労働の要因は、荷待ち時間の増加や物流ニーズが増大する中で、労働力が不足していることなどがあげられます。拘束時間が長いにもかかわらず低賃金になっていることは、より労働力不足を加速させている要因です。こうした背景から労働環境の改善につながるよう、ホワイト物流推進運動が求められています。
運送業界の人手不足
日本は少子高齢化に伴い、労働人口自体が減少してきていますが、運送業界の人手不足はかなり深刻な状況といえます。ドライバーの求人募集数は増えているものの、求職者が集まらないのが現状です。
人が集まらない理由としては、やはり上記でも述べた長時間労働かつ低賃金が影響していると考えられます。激務・重労働のイメージも相まって、働き先として選ばれにくい傾向にあるのです。
さらに、2024年4月1日からは時間外労働の上限規制が適用され、年間960時間までと定められたことで時間外労働を減らすための取り組みが強化されます。改善基準告示の見直しも行われ、ドライバーの稼働時間はさらに短縮されるでしょう。そうなると、稼ぎたくても稼げない状況となってしまい、より労働力不足に陥ってしまうのではないかと懸念されています。
運送業界の高齢化
労働者の平均年齢は、全産業平均で43.4歳だったのに対し、中小型トラックのドライバーは47.4歳、大型トラックのドライバーは49.9歳です。就業者の年齢構成比をみても、45~59歳までが45.3%、29歳以下は10.0%で約半数は45歳~59歳が占めていることがわかりました。
【出典】:統計からみるトラック運転者の仕事|厚生労働省(参照2024-04-08)
また、人手不足も相まって、定年退職したドライバーを再雇用するケースも増えています。ここで懸念されるのが、高齢ドライバーによる事故件数の増加です。運送業界では、雇用範囲を広げる目的で、AT車やAMT車を採用するケースが増えていますが、安易に操作できることで事故が増加するのではないかという懸念もあるのです。