ホワイト物流推進運動とは?メリット・デメリットを解説|IT点呼キーパー

ホワイト物流推進運動とは?メリット・デメリットを解説

マネジメント
  • ホワイト物流推進運動とは?メリット・デメリットを解説 TOP画像
  • 昨今、国内における多くの産業で人手不足の問題が浮上しています。とくに、物流業界ではドライバー不足が深刻な状態です。こうした物流業界の課題を解決しようと、国内で「ホワイト物流推進運動」が活発化してきています。


    そこで今回は、ホワイト物流がどういったものか解説しつつ、賛同を表明するメリット・デメリットや賛同するための方法などをご紹介していきます。最近耳にする機会が増えた「ホワイト物流」がどういったものかわからない、賛同するメリットはあるのかなどといった点を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

ホワイト物流とは? コラム1画像

ホワイト物流とは?

そもそも、ホワイト物流とは何かを把握する必要があります。ホワイト物流とは、トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化を目指しつつ、女性や60代の運転者も働きやすいホワイトな労働環境に改善させる政策を表した言葉です。この政策は国土交通省が主管となり、さらに農林水産省や経済産業省も加わって展開しています。


近年は、働き方改革により長時間労働の是正が進められてきましたが、その一方でトラックドライバーの労働時間は他の産業と比べると長く、それでいて賃金水準は他の産業よりも低い傾向にあります。こうした労働環境を改善してホワイト物流を実現することを、政府は目指しているのです。

ホワイト物流推進運動とは? コラム2画像

ホワイト物流推進運動とは?

ホワイト物流推進運動は、前項でご紹介したホワイト物流を実現させることを目的に、政府主体で進められている社会運動です。ドライバー不足が深刻化している現状に対応し、国民の生活や産業活動に欠かせない物流を安定的に確保することを目指しています。


ホワイト物流推進運動の主な目的は以下の2点です。


  • トラック輸送による生産性の向上と物流の効率化
  • 女性や60歳以上も働きやすい、よりホワイトな労働環境の実現

この運動は、2019年3月下旬頃から賛同表明の募集を開始しており、同時に全国の企業へ参加要請文を送っています。2024年1月31日時点の賛同企業数は2,198社に上っており、ポータルサイトで賛同企業の情報を確認することが可能です。

【出典】:ホワイト物流推進運動のご案内と参加のお願い|国土交通省・経済産業省・農林水産省(参照2024-04-08)

ホワイト物流推進運動が求められるようになった背景 コラム3画像

ホワイト物流推進運動が求められるようになった背景

ホワイト物流推進運動が求められている背景には、以下の3点が影響しているといわれています。


長時間労働かつ低賃金という物流業界の環境

厚生労働省が発表した令和4年賃金構造基本統計調査によると、年間労働時間は全産業平均が2,124時間だったのに対し、中小型トラックのドライバーで2,532時間、大型トラックのドライバーで2,580時間だったことがわかっています。また、年間収入額は全産業平均が499万円だったのに対し、中小型トラックのドライバーは438万円、大型トラックのドライバーが477万円でした。つまり、全産業平均と比べて長い労働時間でありながら、低賃金であることがわかります。

【出典】:令和4年賃金構造基本統計調査|厚生労働省(参照2024-04-08)


長時間労働の要因は、荷待ち時間の増加や物流ニーズが増大する中で、労働力が不足していることなどがあげられます。拘束時間が長いにもかかわらず低賃金になっていることは、より労働力不足を加速させている要因です。こうした背景から労働環境の改善につながるよう、ホワイト物流推進運動が求められています。

運送業界の人手不足

日本は少子高齢化に伴い、労働人口自体が減少してきていますが、運送業界の人手不足はかなり深刻な状況といえます。ドライバーの求人募集数は増えているものの、求職者が集まらないのが現状です。


人が集まらない理由としては、やはり上記でも述べた長時間労働かつ低賃金が影響していると考えられます。激務・重労働のイメージも相まって、働き先として選ばれにくい傾向にあるのです。


さらに、2024年4月1日からは時間外労働の上限規制が適用され、年間960時間までと定められたことで時間外労働を減らすための取り組みが強化されます。改善基準告示の見直しも行われ、ドライバーの稼働時間はさらに短縮されるでしょう。そうなると、稼ぎたくても稼げない状況となってしまい、より労働力不足に陥ってしまうのではないかと懸念されています。

運送業界の高齢化

労働者の平均年齢は、全産業平均で43.4歳だったのに対し、中小型トラックのドライバーは47.4歳、大型トラックのドライバーは49.9歳です。就業者の年齢構成比をみても、45~59歳までが45.3%、29歳以下は10.0%で約半数は45歳~59歳が占めていることがわかりました。

【出典】:統計からみるトラック運転者の仕事|厚生労働省(参照2024-04-08)


また、人手不足も相まって、定年退職したドライバーを再雇用するケースも増えています。ここで懸念されるのが、高齢ドライバーによる事故件数の増加です。運送業界では、雇用範囲を広げる目的で、AT車やAMT車を採用するケースが増えていますが、安易に操作できることで事故が増加するのではないかという懸念もあるのです。

ホワイト物流推進運動に企業が賛同するメリット コラム4画像

ホワイト物流推進運動に企業が賛同するメリット

国が主体となって取り組んでいるホワイト物流推進運動ですが、企業が賛同するメリットはあるのでしょうか?ここからは、賛同することで得られるメリットを3つご紹介します。

SDGsへの取り組みによる企業のPRにつながる

ホワイト物流推進運動に賛同した場合、ポータルサイトに企業名が掲載されます。ホワイト物流推進運動自体、SDGsが目指しているものと同じ方向性を示しているため、賛同表明することによってSDGsに積極的に取り組んでいることのアピールにつながるでしょう。


この取り組みには、働き方改革・労働環境の是正に対して積極的という姿勢を示せることから、人材採用の促進効果も期待できます。運送業のSDGsについてより詳しく知りたい方は、以下の資料もぜひご活用ください。


労働環境改善によって生産性が向上する

ホワイト物流推進運動に賛同する際には、実際に労働環境改善などに取り組むことが大切です。ドライバーの適正な労働時間・賃金の設定を行い、休息時間を十分に確保することで生産性ややりがいの向上につなげます。


労働環境が良くなれば、既存の労働者の離職率を下げつつ、新たな雇用を生み出すことも可能です。経験豊富な人材が集まりやすい環境になれば、その分人材育成や採用にかかるコストも削減できます。


また、取り組みの1つとして業務プロセスの見直しや、最新技術を用いたツール活用も含まれます。たとえば、長時間労働の要因にもなっている荷待ち時間を対策するために、納品先にトラックの予約受付システムを導入したり、バースの荷役予定時間を事前に設定できるようにしたりするなどです。こうした取り組みによって、自社の労働環境が改善されることはもちろん、サプライチェーン全体の生産性向上も期待できます。

補助金申請時に考慮してもらえる

物流関連で補助金を申請する際、ホワイト物流推進運動に賛同しているとプラスに評価される可能性が高いです。たとえば、国土交通省が温室効果ガスの排出削減や持続可能な物流体系の構築を目指すために実施する「モーダルシフト等推進事業」があります。この事業では、上限総額500万円または1,000万円まで経費を補助してもらうことが可能で、評価に利用する項目の例としてホワイト物流推進運動への賛同表明をあげていました。


また、国土交通省と経済産業省が実施する「物流パートナーシップ優良事業者表彰」の応募書類にも、賛同表明の有無を記入する項目があります。必ず評価されるものとは言い切れないものの、今後も補助金制度や表彰などでホワイト物流推進運動への賛同が評価される可能性は高いです。

ホワイト物流推進運動に企業が賛同するデメリットはない コラム5画像

ホワイト物流推進運動に企業が賛同するデメリットはない

ここまで賛同を表明するメリットをご紹介してきましたが、デメリットはないのかと気になる方もいるでしょう。賛同企業になるための手続きは簡単で、物流量や出荷先の情報など、自社が持つ機密情報の報告も不要です。


また、賛同する際には「自主行動宣言」を提出する必要がありますが、そこに記載した取り組みや目標を守らないと罰則が課されるといったことはありません。書類作成に少し手間はかかってしまうものの、それ以外に企業にとって賛同するデメリットはないため、可能な限り賛同した方が良いでしょう。

ホワイト物流推進運動に賛同するには「自主行動宣言」を提出するだけ コラム6画像

ホワイト物流推進運動に賛同するには「自主行動宣言」を提出するだけ

先ほども少しご紹介しましたが、ホワイト物流推進運動に賛同するためには「自主行動宣言」を提出する必要があります。まずは、ポータルサイトで自主行動宣言様式のフォーマットをダウンロードしてください。自主行動宣言の必須項目にすべて合意した上で、以下の賛同を表明することになります。

【出典】:ホワイト物流推進運動への参加手順|ホワイト物流推進運動ポータルサイト(参照2024-04-08)


  • 取組方針
  • 法令遵守への配慮
  • 契約内容の明確化・遵守

必須項目への合意に加えて、自社が取り組む項目も記載していきます。推奨項目の参考例は以下のとおりです。

推奨項目 参考例
運送内容の見直し
  • 物流改善の提案と協力
  • 予約受付システムの導入
  • パレットなどの活用
  • 発荷主からの入出荷情報などの事前提供
  • 幹線輸送部分や集荷配送部分の分離
  • 集荷先や配送先の集約 など
運送契約の方法
  • 運送契約の書面化の推進
  • 運賃と料金の別建て契約
  • 燃油サーチャージの導入
  • 下請取引の適正化
運送契約の相手方の選定
  • 契約先を選ぶ際の法令遵守状況の考慮
  • 働き方改革などに取り組む物流事業者の積極的活用
安全の確保
  • 荷役作業時の安全対策
  • 異常気象発生時などの運行中止・中断など
独自の取り組み
  • 「トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化」につながる独自の取組
  • 「女性や60代の運転者を含む多様な人材が活躍できる働きやすい労働環境の実現」につながる独自の取組
その他
  • 再配達の削減協力
  • 引越時期の分散の協力

自主行動宣言を作成したら、提出用のメールフォームより事務局へ提出してください。なお、提出は随時可能です。

ホワイト物流推進運動には物流DXが欠かせない コラム7画像

ホワイト物流推進運動には物流DXが欠かせない

物流業界はさまざまな課題を抱えている中で、解決に向けた姿勢を示せるホワイト物流推進運動は賛同表明するメリットが多いです。しかし、ただ賛同を表明するだけでなく、実際に労働環境改善などに向けた取り組みを行わなくてはなりません。


労働環境や人手不足など、あらゆる問題を解決させるためには「物流DX」が欠かせないものとなっています。物流DXは、機械化・デジタル化によって業務プロセスの効率化を目指すものです。


たとえば、弊社の総合クラウド点呼システム「IT点呼キーパー」は、運行管理者の労務改善を実現するクラウド点呼システムです。遠隔点呼にも対応しており、これまでの点呼結果の記録を営業所別に一元管理できます。IT点呼キーパーは、国土交通省が実施する「事故防止対策支援推進事業の過労運転防止のための先進的な取り組み」に対する支援における対象機器として、国土交通大臣に累計8回認定されております。導入実績は2024年6月末時点で2,300社・7,100拠点を突破いたしました。


IT点呼キーパーを導入することで、営業所まで行かなくても疑似対面点呼を取れるようになります。遠隔地からでも点呼が行えるため、その分移動時間が削減されます。


また、点呼が取れるだけでなく、出勤情報や測定情報、血圧測定、点呼情報などが自動保存され、点呼記録簿を出力することも可能です。出勤予定管理も行えるため、運行管理者にとっても業務の効率化が目指せるでしょう。


物流DXの促進に向けてツール導入を検討されている方は、ぜひ「IT点呼キーパー」の導入もお考えください。

まとめ:物流業界の改善のためにもホワイト物流推進運動に賛同しよう! コラム7画像

まとめ:物流業界の改善のためにもホワイト物流推進運動に賛同しよう!

今回は、ホワイト物流推進運動についてご紹介しました。物流業界は現在、長時間労働かつ低賃金の労働環境や人手不足、高齢化などの問題が顕著に表れています。こうした問題に対して積極的に取り組む姿勢を、ホワイト物流推進運動に賛同することで示せます。


賛同するためには自主行動宣言を作成する必要がありますが、とくにリスクやデメリットなどはありません。現在もすでに直面するあらゆる課題解決に向けて、ホワイト物流推進運動にもぜひ賛同していきましょう。


【出典】
ホワイト物流推進運動ポータルサイト(参照2024-04-08)
ホワイト物流とは?推進運動の企業事例や賛同メリット、課題を解説|朝日新聞SDGs ACTION!(参照2024-04-08)
賃金構造基本統計調査|令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|e-Stat(参照2024-04-08)
トラック運送業の現況について|国土交通省(参照2024-04-08)

< 次のコラム

日本でもライドシェアは解禁される?解禁される際の問題点やメリットも解説

前のコラム >

傭車とは?利用する理由やメリット・デメリット、コスト削減方法も紹介

人気のコラム 月間ランキング

  • 1

    正しい点呼で違反を防ごう~運送業における正しい点呼とは~
  • 法改正・規制
    正しい点呼で違反を防ごう~運送業における正しい点呼とは~

    自動車運送事業における点呼は、輸送の安全を確保するために法令により実施が義務付けられている業務です。ICT技術の高度化が目覚ましいことから対面点呼に代わる遠隔点呼が実施できるようになり、令和4年4月1日から申請がスタートしています。また令和5年1月からは、乗務を終了したドライバーに対する点呼を自動で実施できる業務後自動点呼がスタートしました。北陸信越運輸局が令和元年6月に公表した平成30年度の自動車運送事業者の行政処分の内容分析結果では、自動車運送事業の最多違反は点呼でした。点呼においては運転者の名前以外にも様々な確認項目があり、確実な点呼を行えていると思っていても違反となる場合や、分かっていても確実な点呼を実施することが負担となる場合など理由は色々とあるでしょう。

  • 2

    遠隔点呼とは?遠隔点呼の申請ルールが令和5年4月から変更
  • 法改正・規制
    遠隔点呼とは?遠隔点呼の申請ルールが令和5年4月から変更

    2022年(令和4年)4月より開始した「遠隔点呼」ですが、2023年(令和5年)3月31日以降ちょっとした変化があったことをご存じでしょうか。これに伴い、遠隔点呼の要件や申請方法が変更されました。そこで本記事では遠隔点呼の定義をおさらいし、2023年4月1日以降の申請方法について解説しますのでトラック事業者の方は参考にしてください。

  • 3

    遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ
  • 法改正・規制
    遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ

    令和4(2022)年4月より、「遠隔点呼実施要領」に基づいた遠隔点呼の申請が開始されています。すでに実施されている「IT点呼」と新たに申請できるようになった「遠隔点呼」には、どのような違いがあるのでしょうか?対面点呼と比べると遠隔点呼とIT点呼は同義に見えることから、どうしても混乱しがちです。本記事では遠隔点呼とIT点呼の違いをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

  • 4

    ロボット点呼とは?国交省による導入要件や導入するメリット・デメリット、導入手順を解説
  • 法改正・規制
    ロボット点呼とは?国交省による導入要件や導入するメリット・デメリット、導入手順を解説

    人員不足が慢性化している運送業界。ドライバー不足に目が行きがちですが、ドライバーの健康や日常の業務を管理する運行管理者不足も深刻です。この現状を重く見た国土交通省が、事業用自動車総合安全プラン2025において、点呼支援機器を使った自動点呼の実現に着手したことから、ロボットを使った無人点呼システム(通称ロボット点呼)に注目が集まっています。そこで今回は、以下の点について徹底解説します。●ロボット点呼とは何か?●他の点呼との違いはどこにあるのか?●ロボット点呼導入に関する要件等●ロボット点呼を導入するメリット・デメリット●ロボット点呼導入に補助金等はあるのか? 人員不足解消、業務効率化に大きな貢献が予想されますので、情報を集め実用化に向けて準備を整えましょう。

  • 5

    法改正で貸切バス事業は何が変わる?事業者・バス運転者への影響とは
  • 法改正・規制
    法改正で貸切バス事業は何が変わる?事業者・バス運転者への影響とは

    2024年4月1日より、貸切バス事業に関する2つの制度が改正されます。●バス運転者の改善基準告示●貸切バスの安全性向上に向けた対策のための制度 この記事では、今回の制度改正について、以下の点をご紹介します。●制度改正の目的●制度の改正ポイント●改正されたら何がどう変わるのか 制度改正は、貸切バス事業者と実際に働く運転者にどのような変化をもたらすのか、事業を円滑に進めるために対応すべき点と具体的な対応策がわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。

最新の製品情報や
ウェビナーなど
イベント情報を配信中

X(旧Twitter)ロゴIT点呼キーパーをフォローする