遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ|IT点呼キーパー

遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ

法改正・規制
  • 遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ TOP画像
  • 令和4(2022)年4月より、「遠隔点呼実施要領(現・点呼告示)」に基づいた遠隔点呼の申請が開始されています。すでに実施されている「IT点呼」と新たに申請できるようになった「遠隔点呼」には、どのような違いがあるのでしょうか?


    対面点呼と比べると遠隔点呼とIT点呼は同義に見えることから、どうしても混乱しがちです。本記事では遠隔点呼とIT点呼の違いをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

    ※「遠隔点呼実施要領(現・点呼告示)」とは、国土交通省が2022年4月から定める「遠隔点呼実施要領〜機器の要件」を指します。

遠隔点呼とは? コラム1画像

遠隔点呼とは

遠隔点呼とは、バス・タクシー・ハイヤー・トラックなどの自動車運送事業者による遠隔地にある拠点間での点呼のことです。点呼は過労運転等による事故防止を目的として、国土交通省が定める法令の貨物自動車運送事業輸送安全規則および旅客自動車運送事業運輸規則において義務付けられています。

安全確保のために運行管理者を営業所に配置し、乗務前後に「対面点呼」を実施することが法令によって義務化されているわけです。しかし令和4(2022)年4月より、「遠隔点呼実施要領」で定められた要件を満たす機器・システムを用いれば、遠隔点呼が可能になりました。


「遠隔点呼実施要領」とは、対面での点呼と同等の確実性を担保するために必要な要件が記されたものです。産官学の有識者で構成された運行管理高度化検討会でとりまとめられたもので、令和3年(2021)年12月に国土交通省自動車局安全政策課長名で発行されました。


「遠隔点呼実施要領」で定められたルールは、以下のとおりです。

  • 機器・システム要件
  • 施設・環境要件
  • 運用上の遵守事項

遠隔点呼の可能な範囲

国土交通省がまとめた「事業用自動車総合安全プラン2025」において、すでに実施されていたIT点呼の対象拡大を検討することになりました。運行管理に活用できるICT(情報通信技術)の著しい発展が、対象拡大の背景にあります。


遠隔点呼の実施にあたり大きく緩和された点は、グループ企業間でおこなう点呼も可能な範囲として認められたことです。ここでいうグループ企業間とは「100%株式保有による支配関係にある親会社と子会社又は、100%子会社同士」のことを指します。


なおバス事業者営業所とタクシー事業者営業所間など、業種が異なる営業所間においては遠隔点呼は認められていません。一定のしばりがあるものの、運転者に対して遠隔点呼を実施する運行管理者の業務効率化を期待できると言えるでしょう。

2024/04/18追記

2023年11月より、事業者間遠隔点呼(共同遠隔点呼)がスタートしました。

「自動車運送事業における運行管理の高度化に向けた事業者間の遠隔点呼の先行実施要領」に基づき、「100%の資本関係にない事業者間」もしくは「資本関係のない事業者間」においても、貨物自動車運送事業法第29条に基づく管理の受委託など必要な手続き等を行ったうえで、国土交通省の採択を受け、産官学の有識者からなる運行管理高度化ワーキンググループの監督の下で行う場合にはその実施期間を最大1年として、先行実施事業として遠隔点呼ができることとする旨の通知が国土交通省より発出されました。

【出典】:事業者間の遠隔点呼の先行実施要領について|公益社団法人全日本トラック協会(参照2024-04-12)

遠隔点呼の可能な範囲は、以下のとおりです。

可能な範囲 概要
営業所内
  • ①営業所と当該営業所の車庫間
  • ②当該営業所の車庫と当該営業所の他の車庫間
営業所間
    【同一事業者】
  • ①営業所と他の営業所間
  • ②営業所と他の営業所の車庫間
  • ③営業所の車庫と他の営業所の車庫間


    【グループ企業】
  • ①営業所と他の営業所間
  • ②営業所と他の営業所の車庫間
  • ③営業所の車庫と他の営業所の車庫間
営業所又は車庫と
宿泊地・待合所・車内等間
    【同一事業者】
  • ①営業所と宿泊地・待合所・車内等間
  • ②営業所の車庫と宿泊地・待合所・車内等間


    【グループ企業】
  • ①営業所と宿泊地・待合所・車内等間
  • ②営業所の車庫と宿泊地・待合所・車内等間

※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。

背景 コラム2画像

遠隔点呼とIT点呼の違い

現行のIT点呼は、法令遵守の意識が高いとみなされる営業所の優良性を前提条件として実施を認められています。優良事業所とは貨物自動車運送業の安全性を評価するGマークを交付された事業所や、行政処分・重大事故が無い開設後3年以上を経過した事業所などのことです。


運転者の本人確認等の確実な実施や、点呼時に必要な情報が営業所間で共有されるなど適切な点呼の実施を期待できることから、事業者の優良性がIT点呼の前提条件とされています。一方、遠隔点呼は、昨今のICTの技術革新を踏まえて「本人確認や情報共有の確実性を担保する高度な点呼機器の使用」などの要件を満たせば実施可能です。


つまりICTの技術革新によって、事業所の「優良性」というしばりが緩和されたことになります。ここでは、遠隔点呼とIT点呼の違いを詳しく見ていきましょう。


機器・システムの違い

法令において、「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる」と定められています。これが、IT点呼における機器選定の法的根拠となります。


「国土交通大臣が定めた機器」とは、「ITを活用した遠隔地における点呼機器」として事故防止対策支援推進事業の一環で定められています。IT点呼機器には、以下の3つの機能が必要です。

  1. 遠隔地における点呼時の運転者の疾病、疲労、睡眠不足等の確認
  2. 遠隔地における点呼時の運転者の酒気帯びの有無の確認および記録
  3. データの保存

一方、遠隔点呼については「遠隔点呼実施要領」に以下のように仔細に規定されています。

  • カメラ・モニター等を通じ、ドライバーの顔の表情、全身、酒気帯びの有無、疾病、疲労、睡眠不足等の状況を確認できる機能を有する。
  • アルコール検知器の測定結果を自動的に記録・保存する機能とともに、当該測定結果を直ちに確認できる機能を有する。
  • なりすましの防止のためにも、確実にドライバー個人を特定できる生体認証機能を有する。
  • 点呼結果および機器故障内容が電磁的方法により記録されること。(点呼の記録データは1年間保持されること、点呼の記録データは改ざん・消去できないこと、一括でCSV形式で出力できること。)

施設・環境の違い

「遠隔点呼実施要領」では遠隔点呼を実施する施設・環境についても、以下のとおり規定されています。

  • 環境照度の確保
  • ビデオカメラ等での撮影
  • 通信環境・通話環境の確保

※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。


カメラ・モニター等を通じてドライバーの体調を確認するためにも、ドライバーの顔とカメラの間の照度は500ルクス程度あることが推奨されています。飲酒運転防止のためにも、ドライバーによるアルコール検知器の使用状況を確認できる監視カメラの設置や、点呼の途絶や音声不良を回避するための環境の確保も重要な要件です。


一方、IT点呼は優良事業者のみに認められているため、施設・環境について詳しいルールは設けられていません。


運用上の遵守事項の違い

「遠隔点呼実施要領」では「運行管理者の遵守事項」「非常時の対応」「情報共有について」も、以下の項目を設けて規定されています。

運用時の注意点 概要
運行管理者の遵守事項
  • 事前の情報把握について
  • 面識のない運転者に対し遠隔点呼を行う場合
  • 運転中の車両位置の把握
  • 運転者の携行品について
非常時の対応
  • 運転者の乗務不可判断について
  • 遠隔点呼の実施が困難となった場合
情報共有について
  • グループ企業間で遠隔点呼を実施する場合
  • 個人情報の扱いについて
  • 事業者の遵守事項
車内・宿泊施設等で
遠隔点呼を行う場合
  • あらかじめ事業者が定めた場所で遠隔点呼を受けていることを、映像により確認する

※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。


輸送の安全の確保に関する取組が優良であると認められる営業所(国土交通省/貨物自動車運送事業輸送安全規則)は、規則内で(使用時間帯等の規則に準じ)IT点呼を行なう事ができ、上述の規定(ルール)は該当いたしません。

遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ コラム3画像

これまでのIT点呼はそのまま使えるの?

遠隔点呼制度が開始されましたが、IT点呼制度を利用している事業者は、「遠隔点呼要綱」ではなく現行のIT点呼制度および旅客IT点呼制度の規定に準じて使用できます。遠隔点呼制度とIT点呼制度は、異なる制度だと理解したほうがいいでしょう。


弊社テレニシでは、IT点呼・対面点呼・電話点呼・スマホ点呼を1つに統合し、運行管理者の労務改善に役立つ「IT点呼キーパー」をご用意しています。

IT点呼キーパーは遠隔点呼の機器・システム要件に対応しており、遠隔点呼の受理に向けてお客様を全力でサポートいたします!

※一部、外部データ等の共通閲覧が必要です。


なお令和4(2022)年4月から運送・輸送事業者(緑ナンバー)に加えて、白ナンバー事業者の点呼時においてもアルコールチェックが義務化されました。安全運転管理者による対面あるいはスマホを利用したアルコールチェックに対応可能なホワイト安全キーパーもご用意していますので、ぜひお役立てください。

まとめ

点呼は、運転者と事業者を守る安全運行の要です。IT点呼の実施ではGマーク認定など優良性を示す定めにより認可が必要でした。一方「遠隔点呼」においては、「遠隔点呼実施要領」記載の要件を満たしていればどの事業者でも実施できます。


ただし対面点呼と同等の確実性を担保するために、活用する機器には高い精度が求められるほか、記録の管理や実施環境等のルールが明文化されているのがポイントです。優良事業者であれば当然実施される事業所同士の情報の共有、点呼時の不正防止、健康起因による事故防止のための項目も盛り込まれています。


弊社テレニシでは、遠隔点呼やIT点呼でのお悩みや不明点等を受け付けておりますので、気軽にご相談くださいませ。また、点呼記録が一元管理できる「IT点呼キーパー」もご用意しておりますので、業務負担軽減と業務効率向上をご検討中の自動車運送事業者様もぜひお問い合わせくださいませ。


【出典】
国土交通省|遠隔点呼実施要領について
国土交通省|事業用自動車総合安全プラン2025
中部運輸局|講演資料 点呼は安全運行の要
国土交通省|遠隔点呼が実施できるようになります!
国土交通省|IT点呼の概要
国土交通省|遠隔点呼の制度化に向けた最終とりまとめについて
国土交通省|遠隔点呼実施要領(案)に対する皆様からのご意見と国土交通省の回答
国土交通省|過労運転防止に資する機器に関する選定要領

< 次のコラム

遠隔点呼とは?遠隔点呼の申請ルールが令和5年4月から変更

前のコラム >

旅客運送事業者も導入しやすい?【改訂版】遠隔点呼を徹底解説

人気のコラム 月間ランキング

  • 1

    正しい点呼で違反を防ごう~運送業における正しい点呼とは~
  • 法改正・規制
    正しい点呼で違反を防ごう~運送業における正しい点呼とは~

    自動車運送事業における点呼は、輸送の安全を確保するために法令により実施が義務付けられている業務です。ICT技術の高度化が目覚ましいことから対面点呼に代わる遠隔点呼が実施できるようになり、令和4年4月1日から申請がスタートしています。また令和5年1月からは、乗務を終了したドライバーに対する点呼を自動で実施できる業務後自動点呼がスタートしました。北陸信越運輸局が令和元年6月に公表した平成30年度の自動車運送事業者の行政処分の内容分析結果では、自動車運送事業の最多違反は点呼でした。点呼においては運転者の名前以外にも様々な確認項目があり、確実な点呼を行えていると思っていても違反となる場合や、分かっていても確実な点呼を実施することが負担となる場合など理由は色々とあるでしょう。

  • 2

    遠隔点呼とは?遠隔点呼の申請ルールが令和5年4月から変更
  • 法改正・規制
    遠隔点呼とは?遠隔点呼の申請ルールが令和5年4月から変更

    2022年(令和4年)4月より開始した「遠隔点呼」ですが、2023年(令和5年)3月31日以降ちょっとした変化があったことをご存じでしょうか。これに伴い、遠隔点呼の要件や申請方法が変更されました。そこで本記事では遠隔点呼の定義をおさらいし、2023年4月1日以降の申請方法について解説しますのでトラック事業者の方は参考にしてください。

  • 3

    遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ
  • 法改正・規制
    遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ

    令和4(2022)年4月より、「遠隔点呼実施要領」に基づいた遠隔点呼の申請が開始されています。すでに実施されている「IT点呼」と新たに申請できるようになった「遠隔点呼」には、どのような違いがあるのでしょうか?対面点呼と比べると遠隔点呼とIT点呼は同義に見えることから、どうしても混乱しがちです。本記事では遠隔点呼とIT点呼の違いをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

  • 4

    ロボット点呼とは?国交省による導入要件や導入するメリット・デメリット、導入手順を解説
  • 法改正・規制
    ロボット点呼とは?国交省による導入要件や導入するメリット・デメリット、導入手順を解説

    人員不足が慢性化している運送業界。ドライバー不足に目が行きがちですが、ドライバーの健康や日常の業務を管理する運行管理者不足も深刻です。この現状を重く見た国土交通省が、事業用自動車総合安全プラン2025において、点呼支援機器を使った自動点呼の実現に着手したことから、ロボットを使った無人点呼システム(通称ロボット点呼)に注目が集まっています。そこで今回は、以下の点について徹底解説します。●ロボット点呼とは何か?●他の点呼との違いはどこにあるのか?●ロボット点呼導入に関する要件等●ロボット点呼を導入するメリット・デメリット●ロボット点呼導入に補助金等はあるのか? 人員不足解消、業務効率化に大きな貢献が予想されますので、情報を集め実用化に向けて準備を整えましょう。

  • 5

    法改正で貸切バス事業は何が変わる?事業者・バス運転者への影響とは
  • 法改正・規制
    法改正で貸切バス事業は何が変わる?事業者・バス運転者への影響とは

    2024年4月1日より、貸切バス事業に関する2つの制度が改正されます。●バス運転者の改善基準告示●貸切バスの安全性向上に向けた対策のための制度 この記事では、今回の制度改正について、以下の点をご紹介します。●制度改正の目的●制度の改正ポイント●改正されたら何がどう変わるのか 制度改正は、貸切バス事業者と実際に働く運転者にどのような変化をもたらすのか、事業を円滑に進めるために対応すべき点と具体的な対応策がわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。

最新の製品情報や
ウェビナーなど
イベント情報を配信中

X(旧Twitter)ロゴIT点呼キーパーをフォローする