遠隔点呼を導入するための3つの条件
遠隔点呼の導入に求められる条件は以下の3つです。
- 所定の要件を満たしたシステム・機器の使用
- 所定の要件を満たした施設・環境下への機器の設置
- 点呼の運用ルールの遵守
導入の入口が広いため、これら3つの条件の内容は厳しくなっています。1つずつ、詳細を見ていきましょう。
1.所定の要件を満たしたシステム・機器を使用すること
遠隔点呼導入の条件、1つ目は「所定の要件を満たしたシステム・機器を使用すること」です。3条件の中で最も細かく、厳しく規定されています。
「所定の要件」とは以下の11項目を指します。
①鮮明な映像と音声の確保
運転者の顔の表情、全身、酒気帯びの有無、疾病、疲労、睡眠不足等の状況を映像と音声により鮮明に確認できること
※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。
②アルコールチェック結果の即時保存機能
アルコールチェックの結果を自動で記録・保存できること
③生体認証機能
点呼執行者、運転者のなりすまし防止目的の本人確認機能(顔認証、静脈認証など)が備わっていること
④点呼項目以外の運行管理情報の確認・共有機能
以下の7項目に関する情報が確認できること
- 日常の健康状態
- 労働時間
- 指導監督記録
- 運行に必要な携行品
- 運転者台帳または乗務員台帳の内容
- 過去の点呼記録
- 車両の整備状況がわかるもの
⑤運転者の普段の健康状態の確認機能
運転者の疾病、疲労、睡眠不足などの状態を普段の状態と比較できること
⑥日常点検記録の確認機能
運行に使用する車両の日常点検結果を確認できること
➆伝達事項の確認機能
点呼執行者が運転者に伝達すべき事項を確認できること
⑧点呼記録の電子記録機能および共有と1年間の保管機能
点呼記録を電磁的方法で保存可能、かつ内容の共有と1年間保管できること
⑨故障履歴の確認・保存機能
機器が故障した際に、発生日時と内容が電磁的方法で記録され、1年間保管できること
➉データ改ざん防止機能
点呼結果、故障記録の修正・消去ができないこと。もしくは変更できるが、変更した場合、変更前の記録が残り、消去できないこと
⑪データの外部出力機能
記録された点呼結果、機器の故障記録がCVS形式のデータとして出力できること
2.所定の要件を満たした施設・環境に遠隔点呼機器を設置すること
遠隔点呼導入の条件、2つ目は「所定の要件を満たした施設・環境に遠隔点呼機器を設置すること」です。
点呼機器が高性能でも設置場所の環境が悪い、たとえば高画素出力が可能なカメラを用意しても、撮影場所が真っ暗で何も映らない、では意味がないことから、設置場所の環境にも細かな規定が設けられています。
「所定の要件」とは、以下の4項目を指します。
①一定以上の明るさが確保される照明器具の使用
カメラやモニターを通じて、運転者の顔の表情と全身の様子、酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足などをしっかり確認できるだけの照明による明るさが確保されていること
②ビデオカメラ等での撮影
ビデオカメラ等により、運行管理者が運転者の全身を遠隔点呼の実施中に随時明瞭に確認できること
※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。
③通信環境の整備
接続が途切れない安定した通信環境(Wi-Fi設備など)が確保されていること
④通話環境の整備
点呼執行者と運転者の対話が妨げられないような通話環境(静かな場所、外部の騒音が入らない等)が整っていること
3.遠隔点呼の運用上の遵守事項を守ること
遠隔点呼導入の条件、3つ目は「遠隔点呼の運用上の遵守事項を守ること」です。
遵守事項は以下の10項目があります。
①地理・道路交通情報の把握
点呼執行者は、点呼業務を行うために必要な情報をあらかじめ用意しなければいけません。
例として、とある会社の東京営業所の点呼執行者が、大阪営業所の運転者と遠隔点呼を行う場合、東京営業所付近だけでなく大阪営業所付近や東京から大阪間の運行にかかわる道路の地理や交通情報を事前に把握しておかなければいけないことが挙げられます。
②事前面談を行うこと
完全な初対面で遠隔点呼を行うことはできません。必ず事前に対面またはオンラインで面談を行う必要があります。
面談で確認する主な事項は以下の通りです。
- 運転者の顔の表情
- 運転者の健康状態・適性診断結果
- その他、遠隔点呼を行うために必要な情報の確認 など
③運行車両の状況把握
点呼執行者は、遠隔点呼を確実に行うために、運行中の車両の位置把握に努めなければいけません。具体的にはGPS等を使用した車両位置管理システムの導入などがあります。
④携行品管理
点呼執行者は、運転者の携行品の管理を行わなければいけません。
確認手段の例として、
- 携行品置き場の監視カメラ等による撮影
- スマホのカメラ機能を使用して運転者が携行品を保有しているかの確認
などがあります。
⑤運行可否の連絡と交替運転者の手配
A営業所の点呼執行者がB営業所の運転者と遠隔点呼を行い、乗務が不可能と判断した場合、速やかにB営業所の点呼執行者に連絡をしなければいけません。これが運行可否の連絡になります。
またこの場合、B営業所は交替運転者の手配等、代替措置を講じる体制をあらかじめ整えておかなければいけません。
⑥機器故障時の点呼
A営業所の点呼執行者がB営業所の運転者と遠隔点呼を行おうとしたが、機器の故障で遠隔点呼の実施ができない場合、B営業所の点呼執行者が対面で点呼を実施するなど、代わりの点呼体制をあらかじめ整えておく必要があります。
➆グループ企業間の点呼における契約締結
グループ企業間で遠隔点呼を行う場合、必要に応じて情報の取扱いに関する契約を締結する必要があります。
ただし、遠隔点呼におけるグループ企業の条件は以下となるため注意してください。
- 100%株式保有による支配関係にある親会社と子会社
- 100%子会社同士
2024/04/18追記
2023年11月より、事業者間遠隔点呼(共同遠隔点呼)がスタートしました。
「自動車運送事業における運行管理の高度化に向けた事業者間の遠隔点呼の先行実施要領」に基づき、「100%の資本関係にない事業者間」もしくは「資本関係のない事業者間」においても、貨物自動車運送事業法第29条に基づく管理の受委託など必要な手続き等を行ったうえで、国土交通省の採択を受け、産官学の有識者からなる運行管理高度化ワーキンググループの監督の下で行う場合にはその実施期間を最大1年として、先行実施事業として遠隔点呼ができることとする旨の通知が国土交通省より発出されました。
【出典】:事業者間の遠隔点呼の先行実施要領について|公益社団法人全日本トラック協会(参照2024-04-12)
⑧個人情報提供の同意
- 点呼執行者、運転者の認証に必要な生体情報
- 運転者の健康状態などの個人情報
以上の扱いについて、事業者はあらかじめ対象となる人から同意を得なくてはいけません。
⑨運行管理規程への明記
事業者は、遠隔点呼実施に必要な事項について、
を行わなければいけません。
⑩車内・宿泊施設等で遠隔点呼を行う場合
あらかじめ事業者が定めた場所で遠隔点呼を受けていることを、映像により確認すること。
※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。