
運送業における正しい点呼とは
点呼は、通常、国家資格を取得した「運行管理者」または補助者によって運転者を対象に実施されます。運行上やむを得ない事情がある場合以外は、対面での実施が基本です。
点呼には、「乗務前点呼」「乗務後点呼」「乗務途中点呼(以下、中間点呼)」があり、それぞれの実施内容が法令によって定められています。(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条)
運行管理者は運転者に対し報告を求め安全確保に必要な指示を出すほか、アルコールチェッカー(以下、アルコール検知器)を使用して酒気帯びの有無を確認しなければいけません。
また運行管理者には、異常な感情の高ぶりや睡眠不足に陥っていないか、安全な運転ができない恐れの有無を把握することも求められています。
(1)点呼の方法と正しい実施ルールについて
【対面点呼】
運転者が営業所、又は車庫の定められた場所で点呼執行者と直接立ちあい行う点呼です。運行上やむを得ない場合以外は、原則、所属の営業所、車庫で乗務前、乗務後に対面点呼を実施しなければいけません。
【電話点呼】
一泊二日や、二泊三日などに及ぶ運行により、運転者が営業所、または車庫の定められた場所で点呼が行えない(運行上やむを得ない場合)に電話等による点呼執行者と直接対話できる方法で行う点呼です。
<注意>
携帯電話や業務無線等ドライバーと直接対話できるもので行います。
電子メール、FAXなどの一方的な連絡方法は該当しないため注意が必要です。
営業所と車庫が離れている、点呼執行者が出勤していない、などの理由も該当しません。
【IT点呼】
IT点呼とは、同一の事業者内のGマーク営業所において認められる点呼方法です。
Gマーク制度は、国土交通省が推進する「安全性優良事業所」の認定制度で、貨物自動車運送事業安全性評価事業とも呼ばれています。
Gマーク営業所は、従来は対面で実施されていた点呼方法に加え「国土交通大臣が定めた機器」を使用して、営業所間または営業所と車庫間で点呼が実施できるわけです。
IT点呼を導入すると、カメラあるいはモニターを駆使して、離れた場所でも対面と同様の点呼を実施することが可能になります。
少ない人員でも早朝や深夜の点呼に対応できるため対面点呼よりも人件費を削減できるほか、点呼記録簿が自動作成される点も大きなメリットです。
【遠隔点呼】
遠隔点呼とは、2022年4月から申請書を提出できるようになった新たな点呼方式です。
バス、ハイヤー、タクシー、トラックなどの自動車運送事業者が、機器・システムを利用して「営業所内」あるいは「営業所間」及び100%子会社のグループ営業所間のいずれかの遠隔拠点間で実施する点呼を指します。
遠隔点呼は、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて「事業用自動車総合安全プラン2025」において感染症予防の施策として対面で行われている業務の「非対面化」を進めるために設けられた施策です。
遠隔点呼実施要領で定める要件を満たせば、遠隔拠点間の点呼「遠隔点呼」が可能になります。
遠隔点呼実施要領で定義されたのは、次の8つの実施パターンです。
遠隔点呼を実施する場所 | 実施パターン |
---|---|
営業所内 | ①営業所と当該営業所の車庫間 ②当該営業所の車庫と当該営業所の他の車庫間 |
営業所等間 |
③営業所と他の営業所間 ④営業所と他の営業所の車庫間 ⑤営業所の車庫と他の営業所の車庫間 ⑥営業所とグループ企業の営業所間 ⑦営業所とグループ企業の営業所の車庫間 ⑧営業所の車庫とグループ企業の営業所の車庫間 |
従来は、法令遵守の意識が高いとみなされるGマーク取得営業所の優良性を前提条件としてIT点呼が実施されていました。
しかし、ICTの目覚ましい技術の発展と感染症予防の観点から、事業所の「優良性」というしばりが緩和され、Gマーク未取得営業所でも実施可能な遠隔点呼という制度がスタートしたのです。
ただし、遠隔点呼の導入にあたっては、「遠隔点呼実施要領」で「機器・システム」「施設・環境」「運用上の遵守事項」について仔細に定められた要件を満たす必要があります。
【業務後自動点呼】
業務後自動点呼は、2023年1月より開始された新しい点呼制度です。
業務後自動点呼実施要領に定められた要件を満たすとして認定を受けた機器を使用して、当該事業者の営業所または営業所の車庫において乗務終了後に行う点呼(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条2項及び4項の規定に適合する対面点呼)です。
機器に求められる基本要件は、次のとおりです。
- アルコール検知器による測定の様子と結果を画像で記録保存できる
- 運行状況など、ドライバーからの報告事項を電子的な方法で記録できる
- 管理者側からの伝達事項をそれぞれのドライバーに伝える
- 点呼の実施予定や結果を確認できる
業務後自動点呼では、認定を受けた機器、すなわちロボットで自動化することから運行管理者は点呼に立ち会う必要はありません。
しかし機器が故障したりアルコールが検知されたりといった非常時においては、常に人が対応できる体制を必要とするため「条件付き」の自動点呼とされています。非常時の機器から人への切り替えは、現状認められている点呼方法であれば適用できます。
そこで業務後自動点呼を運用する際には、IT点呼キーパーなどの遠隔地でも点呼ができる仕組みと組み合わせるといった工夫がおすすめです。
(2)点呼執行者について
運行管理者の資格を持った者、または、事業者が選任した補助者が点呼を実施しなければいけません。また、全体の点呼の回数の3分の1以上は運行管理者が行わなければいけません。(月単位)
(3)点呼記録について
点呼を実施した記録(記録簿)は点呼を実施した点呼執行者が所属する営業所、ドライバーが所属する営業所の双方に保管しておく必要があります。保管期間は1年間です。
※形式として平成30年4月より点呼記録については書面による記録・保存に代えて、電磁的方法(デジタル)による保存が行えるようになりました。