遠隔点呼開始に必要な3つの要件|2023年新・点呼告示
「2023年新・点呼告示」は、以下3つの要件から構成されています。
- 遠隔点呼機器の機能の要件
- 遠隔点呼機器を設置する施設及び環境の要件
- 遠隔点呼機器の運用上の遵守事項
遠隔点呼の運用環境を整えるには、遠隔点呼機器の機能の要件で規定された機能を持つ点呼システムを導入し、遠隔点呼を実施する側・実施される側の各拠点別に決められている「施設及び環境の要件」を満たす必要があります。
また「運用上の遵守事項」を遵守していくことを宣誓した上で、管轄所管の各運輸支局等へ開始時期の10日前までに申請書を提出し承認を受ける流れです。
なお乗務不可と判断された時に交替などの代替措置や、機器の故障時などで遠隔点呼が実施できない場合の体制をあらかじめ整えてく必要があります。
以上を踏まえて、「2023年新・点呼告示」の3つの要件について詳しく見ていきましょう。
遠隔点呼に使用する機器が満たすべき機能の要件
もともと12項目あった機能要件は、点呼執行者と運転者の生体認証にかかる項目3と項目4が統合されて次の11項目となりました。
①映像と音声で明瞭に次の状況が確認できること
- 運転者の顔、表情、全身
- 酒気帯びの有無
- 疲労、疾病、睡眠不足等で安全運転ができない恐れの有無
②アルコール検知器による測定結果の自動記録保存と確認
③点呼執行者および運転者の生体認証
④遠隔点呼実施地点間において次の事項を共有する機能
- 日常の健康状態
- 労働時間
- 指導監督の記録
- 運行に要する携行品
- 乗務員等台帳
- 過去の点呼記録
- 車両の整備状況
⑤疲労、疾病、睡眠不足等で安全運転ができない恐れの有無を、運転者の平常時と比較して確認できる機能
⑥車両の日常点検記録管理
⑦運行管理者の指示伝達すべき事項を確認できる機能
⑧点呼結果記録の共有と1年間の保存機能
⑨機器の故障履歴記録と1年間の保存機能
⑩記録の改ざんを防止する機能
⑪点呼結果と故障記録をCSV形式で出力する機能
遠隔点呼機器を設置する施設及び環境の要件
ここでは遠隔点呼を実施する「施設・環境の要件」についてご紹介します。
①映像と音声で明瞭に次の状況が確認できる明るさ・環境照度の確保
- 運転者の顔、表情、全身
- 酒気帯びの有無
- 疲労、疾病、睡眠不足等で安全運転ができない恐れの有無
※遠隔点呼を受ける運転者がいる営業所等の部屋の明るさの規定です。従前は照度500ルクス程度(化粧や就寝前の読書に必要な明るさ)が推奨値とされていました。
②なりすまし・不正防止
被遠隔点呼実施営業所等の運転者の全身及びアルコール検知器の使用時の状況が確認できるよう、ビデオカメラ・スマートフォン等により、運行管理者が運転者の全身を遠隔点呼の実施中に随時明瞭に確認できること。
※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。
運転者の全身やアルコール検知器の使用状況を遠隔地からリモートでチェックするために、ビデオカメラ・スマートフォン等での撮影が求められているのがポイントです。
③通信環境・通話環境の確保
遠隔点呼が途絶しないように必要な通信環境を備えていること。また、遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等と被遠隔点呼実施営業所等の運転者の対話が妨げられることのないよう、必要な通話環境が確保されていること。
遠隔点呼を実施中に通信トラブルが発生しないよう、インフラ環境が整備されているか事前に確認しておきましょう。
遠隔点呼の運用上の遵守事項
機器・システム・施設・環境などのインフラ環境を整備した上で、正しい運用が行われるように運用上の遵守事項が定められています。
①運行管理者等の遵守事項
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遵守する内容 |
事前の情報把握 |
地理情報や道路交通情報等、業務を遂行するために必要な情報を把握しておく |
運行中の車両位置の把握 |
点呼漏れや車両の持ち帰り防止のため、GPS等による車両位置管理システムを導入・活用するなどして、車両位置の把握に努める |
面識のない運転者に対し 遠隔点呼を行う場合 |
遠隔点呼を受ける運転者の顔の表情、健康状態および適性診断結果その他の遠隔点呼の実施に必要な事項について、事前に運転者と対面あるいはオンラインで面談する機会を設けて確認しておくこと |
運転者の携行品のチェック |
遠隔点呼時に、運転者の携行品の保持状況または返却状況を、携行品の有無を検出する機器・システムを活用して確認、あるい監視カメラ等で携行品置き場の状況を確認する |
②非常時の対応
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遵守する内容 |
運転者の乗務不可判断 |
- 運行管理者等は、遠隔点呼により運転者が乗務できないと判断した場合、直ちに運転者が所属する営業所の運行管理者等に連絡する
- 運転者が所属する営業所では交代運転者を手配する等の代替措置を講じられる体制を整備する
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機器故障等によって 遠隔点呼の実施が 困難になった場合 |
運転管理者による対面点呼、あるいは営業所等で実施が認められている点呼を実施可能な体制を整備する |
③情報共有
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遵守する内容 |
完全子会社等との間で 遠隔点呼を実施する場合 |
必要に応じ、遠隔点呼に必要な情報の取り扱い等にかかる契約を締結する |
個人情報の扱いについて |
運行管理者等/運転者の認証に必要な生体情報等、遠隔点呼の実施にあたり個人情報を扱う場合には、事業者と対象者間で同意を得ること |
事業者の遵守事項 |
遠隔点呼の運用に関し必要な事項について、あらかじめ運行管理規定に明記するとともに、運行管理者や運転者等の関係者に周知 |
④車内・宿泊施設等で遠隔点呼を行う場合
あらかじめ事業者が定めた場所で遠隔点呼を受けていることを、映像により確認する
※2024年4月1日施行の遠隔点呼要項「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)に合わせ修正。