運送業の業務効率化が必要な背景
ここでは、運送業において業務効率化が必要とされる背景についてご紹介します。
「物流の2024年問題」への対応策が求められる
「物流の2024年問題」とは、2024年4月1日施行の働き方改革関連法が物流業界に及ぼすさまざまな影響の総称です。これによりトラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用されるようになり、労働時間の延長上限は年960時間(月平均80時間)に制限されるようになります。
時間外労働とは、法定労働時間を超えて働いた時間、いわゆる残業時間のことです。時間外労働の上限規制の適用はトラックドライバー1人当たりの走行距離は制限を受けることを意味し、長距離のトラック輸送が困難になると懸念されています。
さらに運送会社は売上減少を余儀なくされ、しいてはトラックドライバーの収入減少を招き、荷主企業は物流費高騰などの問題に直面するとして危惧されています。
実際にトラック運送事業の営業費用の4割は運送にかかる人件費とされ、ドライバーの収入をあげるためには運賃確保が不可欠だとされています。
ドライバーの人手不足が深刻化している
国土交通省がさまざまな報告書でも言及しているとおり、トラックドライバーの人手不足が深刻化しています。
トラックドライバーは他産業に比べて長時間労働の傾向にあり、しかも低賃金という労働環境の悪さもあって、若手の人材不足が顕著です。全産業平均と比較して、年齢構成は若年層と高齢層の割合が低く中年層の割合が高いほか、労働時間も約2割長いという調査結果が出ています。
全日本トラック協会が四半期ごとに発表している「トラック運送業界の景況感(令和4年4月~6月)」によると、労働力に「不足」「やや不足」と感じる企業の割合は63.6%に達しました。前回調査時より8.9ポイント上昇したほか、今後はさらに8.6ポイント上昇する見込みで、労働力の不足感がより一層強くなると予想されています。
業務効率化への取り組みは、人手不足への対策としてだけでなく、労働環境の改善にもつながるとして期待されているわけです。
EC市場拡大で小売流通が激変し物流も変革が求められる
デジタル化が進み、EC(電子商取引)市場が拡大していることから小売流通の現場も激変しました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるステイホームなど外出自粛の要請の影響で、オンライン取引の利用増加につながっています。
EC市場の拡大に伴い個人向けの宅配の需要が高まり、荷物量やピッキングなどの倉庫業務は増加傾向です。一方で、迅速な配達を優先する個人向けの小口配送ではトラックの積載率の減少が問題となっているほか、効率を悪化させる再配達の増加も問題視されています。
労働環境を改善しながら、従来よりも少ない労働力で良質な配送サービスを提供するために必要なのが、業務効率化というわけです。トラック運送事業者同士、また配送先や顧客(荷主)との間で協力・連携して共同配送など効率的な仕組みづくりへの取り組みが重要だといえるでしょう。
DX推進や環境への配慮が求められる
国土交通省は、物流効率化を実現するための取り組みを長年にわたって続けています。2005年(平成17年)には「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(以下、物流総合効率化法)」が施行されました。
物流総合効率化法は、「輸送網の集約」「モーダルシフト」「輸配送の共同化」等の合理化を進める事業計画の認定や支援措置等を定めた法律です。モーダルシフトとは、トラック等の車両で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することを指します。
認定を受けると税制特例の適用や開発許可の配慮を受けられる点が、物流総合効率化法に則った事業計画をたてるメリットです。
またCO2排出削減やITを活用した業界の変革、すなわち物流DXも政府は推進していることを忘れてはいけません。効率化はもちろん、新しい価値を創出する物流システムの構築に向けて一歩踏み出すよう検討すべきだといえるでしょう。