
運転指導はなぜ必要なのか
事故未然防止や事故削減の実現を目的とした安心・安全の取り組みが、安全運転指導です。車を運転する従業員に対して、安全運転の重要性を自覚させるための指導を実践することが管理者には求められています。
たとえば、走行中にカーナビや携帯電話の画面を注視する「ながら運転」をやめ運転に集中できる環境を整える、また歩行者や自転車の横断が見えづらい夕暮れ時は事故の危険性が高いので「横断歩道手間で減速する」などの指導です。
業務中に交通事故を発生させると、運転していた本人の責任に加えて、企業に対しては運行供用者責任が問われます。また事故対応による営業機会の損失だけでなく、企業イメージに大きなダメージを与えることもあるのです。失った社会的信用を取り戻すためには時間がかかり、決して簡単なことではありません。
運転免許証を保有しているからとって、すべての新入社員の運転技術が高く「安全運転とは何か」を理解しているとは限りません。またゴールド免許を保有している人であっても、教習所で学んで以来、実際には運転したことがないペーパードライバーの可能性もあります。
そこで企業はもとより従業員とその家族を守る意味でも、安全運転意識を向上させるために従業員への適切な指導を実施することが重要であります。
安全運転指導は管理者の法定業務
トラックなど事業用自動車の運行管理者については、ドライバーに対する指導監督指針の内容が細かく定められています。運転する場合の心構えを理解し、運転者の運転適性に応じた安全運転を指導する立場にあるのです。また一般的な指導および監督はもちろん、「事故惹起(じゃっき)運転者」「初任運転者」「高齢運転者」などの特定の運転者に対する特別な指導も含まれているので押さえておきましょう。
運行管理者は「運行管理の実務や関係法令、安全の確保に必要な管理手法」などを学ぶ講習を、自動車学校や自動車事故対策機構などで受講することが義務付けられています。講習認定機関の名称は、国土交通省の自動車総合安全情報で案内されていますので確認してください。
また社用車の安全運転管理者は、総務部から選任されていることが多いでしょう。安全運転管理者は、運転者に対して道路交通法で定められた「交通安全教育指針」に基づく教育を実践するほかにも「自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行うこと」とされています(道路交通法施行規則第9条の10)。
安全運転管理者においても、安全運転管理者等法定講習の受講が義務付けられているので注意が必要です。都道府県警察ごとに、講習の日程や場所が案内されていますので確認してください。なお2022年(令和4年)4月1日から改正道路交通法施行規則の施行に伴い、安全運転管理者の業務が拡充されていますのでチェックしておきましょう。
新入社員は運転に不安を抱えている可能性が高い
ここでは令和4年交通安全白書で示された年齢層別のデータを見てみましょう。下記のグラフを見ると、30代や40代と比べて20代の交通事故死者数が多いことがわかります。グラフのピンクは自動車乗車中の事故、グリーンは自動二輪車乗車中を原因とする事故の割合を示すものです。

【出典】:令和4年交通安全白書「年齢層別・状態別人口10万人当たり交通事死者数(令和3年)」|内閣府(参照2022-12-08)
このデータから、20代は年齢的に経験が浅いこともあり交通事故を起こす可能性が高いことが伺えます。近年では若者のクルマ離れが叫ばれており、運転操作に不慣れなペーパードライバーが増えていることも考えられます。そこで管理者側も運転指導を実施する際には、とくに若年層は運転中に不安を感じている可能性を把握しておくことが大切です。
新入社員に対しては、自分の運転マナーは周囲から見られていることをしっかり意識させましょう。安全確認を行うなど余裕のある運転を心がけ、法令を遵守していれば企業イメージ向上につながります。一方で危険運転などの法令違反をしていると、結果として会社の評判を落とすことになるからです。