2024年問題への対応策
ドライバーの時間外労働への上限規制で生じる課題への対応策は、以下の5つが考えられます。
- 勤怠管理の強化
- 労働環境・条件の見直し
- 輸送効率の向上
- 輸送体制の見直し
- 物流業界の広報活動
それぞれ解説します。
勤怠管理の強化
2024年問題への対策の1つ目は、勤怠管理の強化です。
勤怠管理を強化すると、無駄な時間外労働が減らせます。時間外労働の上限規制への抵触を避けられるだけでなく、十分な休憩時間を取りやすくなります。
一例として、決められた出社時間より極端に早い出社や無意味な居残りを禁止するなど、出退勤に関するルールを明確にすると効果的です。
月単位での管理はもちろん、長時間労働になりやすいドライバー、倉庫作業員は繁忙期、閑散期を踏まえて3か月、半年、1年といった長いスパンでの勤怠管理を意識しましょう。
労働環境・条件の改善
2024年問題への対策の2つ目は、労働環境や労働条件の改善です。
物流業界の人手不足の原因は、「他業種に比べて拘束時間が長く身体への負担が大きいのに給与が少ない」点に尽きます。
この問題を一度に解決するのは難しいので、
- 労働時間をそのままに、賃金を平均年収レベルまで引き上げる
- 賃金を据え置く代わりに労働時間を短縮し、自由に使える時間を与える
- 副業を認める
など、従業員が複数の労働条件から自らの意思で働き方を選べるように改善すると、充実した生活が送れて待遇の悪さによる退職者が減るでしょう。
ITの活用による輸送効率の向上
2024年問題への対策の3つ目は、輸送効率の向上です。
人員の確保が困難な現状を考えると、輸送効率を高めるには機械の力に頼らざるを得ません。
ITを活用した輸送効率の向上策には以下のものがあります。
- ドローンの活用
- 輸送管理システムの導入
- トラック予約システムの導入
- 伝票・送り状作成に必要な顧客情報のデータ管理化
ドローンの活用などはまだテスト段階なのですぐの導入は難しいですが、世間の流れに乗り遅れないよう今後の動向に注目しておくべきでしょう。
輸配送形態の切り替え
2024年問題への対策の4つ目は、輸配送形態の切り替えです。
ドライバーの労働時間に規制がかかるため、これまで可能だった長距離輸送が難しくなることが予想されるためです。
切り替えの具体策としては、リードタイムの見直しとリレー運送が比較的導入しやすい方法と言えるでしょう。
リードタイムとは、荷物を預かってから目的地に届くまでの時間の目安です。長距離輸送においてはリードタイムを1日伸ばすなどして、生まれた時間をドライバーの休息時間などに充て、ドライバーの負担軽減を図ります。
リレー運送とは、いわゆる中継プレーです。たとえば、ある荷物を東京から福岡まで運びたい場合、東京を出発したドライバーは大阪まで輸送し、大阪から福岡までは別のドライバーが引き継いで輸送する方法です。
全国に複数の営業所を持つ運送事業者は、リレー運送を活用するとドライバーの拘束時間を抑え身体の負担を軽減し、長距離ドライバーにありがちな自宅に帰れない日を減らせます。
物流業界の変化の広報
2024年問題への対策の5つ目は、業界の広報活動です。
「2024年問題は物流業者だけの問題」と思われがちですが、物流業界は人々の生活基盤を支える業界です。物流の輸送能力が落ちることでさまざまな不便が発生します。
そのため、2024年問題は一般消費者から他産業にも影響を及ぼす社会的な問題であることを物流業界から発信する必要があるのです。
具体的には、企業HP、SNS、パンフレットなど使える媒体をフル活用して2024年問題を世間に伝え、理解を深めてもらう努力を物流業界が率先して行わなければなりません。
物流業界以外の人に「協力しなければ自分たちの業務にも影響が出る」と思ってもらえれば、輸送時間の猶予や物流コストの値上げにも協力してもらえる可能性が出てくるでしょう。