トラックドライバー不足に対する改善策
トラックドライバー不足の要因が明確になると、「ではどのように改善すればよいのか?」という疑問が生じます。ここでは、トラックドライバー不足に対する改善策をご紹介します。
賃金や労働時間などの労働条件
トラックドライバー不足に対する改善策の1つ目は、労働条件の改善です。
既存の従業員を減らさず、若年層や女性を取り込むためには、他産業より1~2時間長い労働時間や1~2割少ない賃金の対応から女性が働きやすい清潔な職場づくりなど労働条件の改善が必須です。
労働条件の改善に向けて、国土交通省は平成30年に貨物自動車運送事業法を改正しました。主な改正内容は以下の4点です。
規制の適正化
規制の適正化として、以下の内容が改正されました。
①欠格期間を延長し、法令に違反した者等の参入を厳格化(貨物自動車運送事業法第5条に記載)
- 欠格期間が2年から5年に延長
- 処分逃れの自主廃業をした者の参入制限
②約款の認可基準の明確化
- 原則として運賃(運送の対価)と料金(運送以外のサービス等)を分別して収受する
事業者が遵守すべき事項の明確化
事業者が遵守すべき事項として、以下の内容が改正されました。
①輸送の安全に係る義務の明確化
②事業の的確な遂行のための遵守義務の新設
荷主対策の深度化
過労運転、過積載等の問題はトラック事業者の努力だけでは改善が困難なため、荷主企業の理解・協力が必要として以下の改正を実施しています。
- 荷主の配慮義務の新設
- 荷主勧告制度(既存)の強化
- 国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定の新設
標準的な運賃の告示制度の導入
運送業者の荷主との交渉力の弱さを考慮し、持続的に事業を行うための参考運賃の告示を国土交通大臣が行えるようになりました。
なお、国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定と標準的な運賃の告示制度は、令和5年度末までの時限措置でしたが、令和5年の貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律の施行により、当分の間継続されることになりました。
高齢者ドライバーの活用
トラックドライバー不足に対する改善策の2つ目は、高齢者ドライバーの活用です。若い労働力によってドライバー不足を解消するには時間がかかるため、高齢者ドライバーの活用が積極的に検討されています。
高齢者ドライバー活用のメリット
- 豊富な経験と高い技能で即戦力になる
- 若年層へ技能・知識を継承できる
高齢者ドライバー活用のデメリット
- 安全面、健康面管理の厳重化
- メンタルケアの必要性(賃金低下によるモチベーションの低下など)
現役世代と同水準の待遇を用意できない企業は、高年齢雇用継続給付などの公的給付もあわせて活用していく必要があるでしょう。
DXの導入による配送業務の効率化
トラックドライバー不足に対する改善策の3つ目は、DX導入による配送業務の効率化です。
DXとは?
DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことであり、精度が高いデータと最新のデジタル技術を活用し、企業の変革、新たな価値創出や競争力向上を目指すことを指します。
具体的には、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などのIT技術を使って、配送の最適化、自動化を行い、生産性アップを目指します。
配送マッチングサービスの活用
トラックドライバー不足に対する改善策の4つ目は、配送マッチングサービスの活用です。
配送マッチングサービスとは?
インターネットやスマホで得られる情報(主にGPS)から、配送を必要としている荷主と空車のトラックなどを効率的に引き合わせるサービス。荷主と運送事業者で取引が成立した場合、運送料の一部を手数料として徴収するモデルが一般的。
配送マッチングサービスはウーバーイーツの物流版ともいわれ、物流の効率化を目指すシステムとして注目されています。送る側は急な配送依頼でも運送業者が見つかりやすい、運ぶ側は帰路につく空車や待機中の車、個人事業主の車などを有効活用し、収益増が期待できるメリットがあります。
運送事業者は繁忙期に向けた一時的な増車や急な配送に自社の車で対応できない場合などに活用することで、荷主のニーズに応え新たな案件獲得のきっかけにできます。
荷役作業の業務改善
トラックドライバー不足に対する改善策の5つ目は、荷役作業の業務改善です。ドライバー人口が増えない、安定しない原因の1つに荷役作業の負担があります。具体的には、手作業による荷物の積み降ろしがきついことです。
改善策には、
- パレット輸送・パワーゲート輸送の導入・拡大
- 荷役作業の機械化、自動化
などが挙げられるでしょう。
高齢者や女性に、「これなら自分にもできる」と思ってもらえれば、ドライバー人口が増える可能性は大きく上がります。
在庫拠点を増やし分散
トラックドライバー不足に対する改善策の6つ目は、在庫拠点の分散です。イメージとしては、営業所、倉庫などを増やすといった改善策です。拠点が増えると拠点間の距離が近くなるため、長距離輸送が減少し、業務が効率的になります。
長時間労働の抑制は、コストの減少、2024年問題(年間960時間未満とする時間外労働の上限規制)に対応できるなど、働き方改革関連法に沿った経営にもつながります。ほかにも、災害の発生で道路網が寸断されても、止まる荷量が少なく済む点も見逃せません。
一方で、拠点の運営費や拠点に業務を振り分ける作業が増加するなどのデメリットがあることを把握し、対応策を練っておく必要はあるでしょう。
広報活動に注力
トラックドライバー不足に対する改善策の7つ目は、広報活動への注力です。待遇と労働条件が他産業と比較して不利な運送業界。どうしても魅力が少なくなってしまうため、募集広告をやみくもに出しても簡単に人は集まりません。
そこで、自社サイトやSNSを使って情報発信をしましょう。ポイントは、自社の魅力だけでなく、トラック業界の動向も発信することです。トラック業界全体が活気づかないと、たとえ自社に人が集まっても業績は伸びません。
物流は人々の生活を支える土台です。物流の大切さを発信し、自分に密接な関係があることをできるだけ多くの人に理解してもらえる広報活動を行いましょう。