飲酒運転事故(酒気帯び運転)の罰則・行政処分・危険性について|IT点呼キーパー

飲酒運転事故(酒気帯び運転)の罰則・行政処分・危険性について

法改正・規制
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  • 飲酒運転事故は多くの命を奪い、社会に甚大な影響を与えています。飲酒運転はアルコールがドライバーの判断力と反応速度を著しく低下させるため、悲惨な死亡事故につながる危険性の高い行為です。そのため、多くの国で厳しい罰則が設けられていますが、残念ながら飲酒運転は絶えません。


    日本でも飲酒運転が原因で多くの悲惨な事故が発生しています。平成18年8月に、福岡県で幼児3人が死亡する飲酒運転による重大事故が発生しました。この事故が社会問題化したことを受けて、飲酒運転厳罰化や行政処分強化などの取り組みのほか、警察による飲酒運転根絶に向けた取り締まりの強化が行われました。運送業界でも、国土交通省の指導のもと、アルコールチェックの実施など飲酒運転防止に向けた取り組みに力を入れています。


    しかしながら、飲酒運転による交通事故の発生は後を絶ちません。「平成30年までに死者数及び人身事故件数を半減、飲酒運転ゼロ」を目標に掲げた「事業用自動車総合安全プラン2009」(平成21年3月)の発表から10年以上が経過しましたが、いまだに飲酒運転による交通事故はなくなっていません。令和3年(2021年)には、飲酒運転の死亡事故率(交通事故件数に占める死亡事故件数の割合)は、飲酒なしの約9.2倍という結果がでています。


    本記事では、事業用自動車ドライバーによる飲酒運転事故の事故件数や法的な刑罰、その危険性について詳しく解説します。

飲酒運転事故(酒気帯び運転)と罰則について コラム1画像

飲酒運転による事業用自動車ドライバーの事故件数の状況(2024年7月時点)

飲酒運転は非常に重大な社会問題であり、特に事業用自動車ドライバーにとって、従業員が飲酒運転事故を引き起こした際の社会への影響は一層深刻です。事業用自動車は業務上、多くの人や物を運ぶ役割を担っており、そのドライバーによる飲酒運転は非常に危険性が高いため、飲酒運転の抑制が極めて重要です。


また、飲酒量の多少にかかわらず、アルコールは脳の機能を麻痺させます。一般的に体内に取り込まれたアルコールの分解には、1日の適量(ビール・発泡酒の中ビン1本程度)でさえ、男性は平均で2.2時間、女性は3時間かかるそうです。分解速度には個人差があることから、「自分は少ししか飲んでいないから大丈夫」という過信や油断は禁物だといえます。そのため翌朝に運転業務を控えている場合は、深夜の飲酒を控えるなどの対策を徹底することが大切です。


飲酒の運転操作等への主な影響は、次のような点が挙げられます。


  • 安全運転に必要とされる「情報処理能力」「注意力」「判断力」が低下する
  • 危険の察知が遅れたり、危険を察知してからブレーキペダルを踏むまで時間がかかったりする
  • 気が大きくなり、速度超過などの危険運転をしてしまう

事業用自動車ドライバーの飲酒運転による事故件数(2024年7月時点)

ここでは、2024年7月時点での飲酒運転による事業用自動車ドライバーの事故件数について詳しく解説します。

左右にスライドすると表を見ることができます

2010
平成22年
2011
平成23年
2012
平成24年
2013
平成25年
2014
平成26年
2015
平成27年
2016
平成28年
2017
平成29年
2018
平成30年
2019
令和元年
2020
令和2年
2021
令和3年
2022
令和4年
事業用全体 71 64 46 51 49 53 54 45 40 56 36 35 37
トラック 56 55 39 40 42 49 48 41 34 48 36 32 34
タクシー 14 8 7 11 7 4 6 4 6 8 0 3 3
貸切バス 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
乗合バス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

【出典】:2024年2月22日 事業用自動車の飲酒運転の状況とその対策について|国土交通省(参照2024-07-19)


事業用自動車による飲酒運転事故件数は、2012年(平成24年)以降横ばいの状況が続いており、削減目標である「飲酒運転ゼロ」は未だ達成できていません。
飲酒運転による事業用自動車の交通事故は、2022年(令和4年)は37件も発生しました。
この37件の飲酒運転事故のうち、34件がトラック運転手によるものでした。


これは、トラックドライバーの業務が深夜や長時間に及ぶことが多く、ドライバーが疲労やストレスを感じる結果、酒に依存しやすい環境にあるからといわれています。
例えば、ある運送業者では、夜間の長距離運転中に飲酒をしてしまい、重大な交通事故を引き起こした事例があります。このように安全管理が不十分な事業者においては、社会的影響の大きい死亡事故が発生する確率が高くなります。さらにこのような事故は、企業にとっても社会全体にとっても大きな損害をもたらします。交通事故による被害者の救済費用や、会社の信用の失墜、保険金請求、そして交通事故による死者数の増加など、多岐にわたる負の影響が連鎖的に発生します。


そもそも運送業界では交通安全教育の実施はもちろん、ドライバーに対し運転前のアルコールチェックが義務付けられていることから、飲酒運転は避けられるはずです。基本的に「飲酒運転を絶対にしない、させない」という意識が大切なのに、トラック業界で飲酒運転が起きてしまう理由は何か。運行時の現場の実態を調査するなど、運送業界全体であらためて考えていく必要があるでしょう。


事業用自動車のドライバーが飲酒運転をしないようにするためには、厳格なアルコールチェックと、ドライバーへの啓発が重要です。例えば、夜間勤務者への特別な注意喚起を行うなどの対策が考えられます。また、飲酒運転の危険性を理解してもらうため、教育研修やハンドルキーパー運動などの啓発活動を行うことも効果的です。


このように厳格な対策と従業員への教育を徹底することで、悲惨な事故を防ぎ、運送業界全体の安全を高めることができます。

飲酒運転事故(酒気帯び運転)と罰則について コラム2画像

飲酒運転の罰則規定(2024年7月時点)

飲酒運転とは、アルコール分を体内に保有した状態で運転する行為です。

飲酒運転は重大な犯罪であり、その結果として多くの悲劇的な事故が発生しています。そのため社会的影響が大きい事業用自動車のドライバーによる飲酒運転の罰則は、ドライバーおよび事業者の両方に対して厳しく設定されています。これは飲酒運転が社会に及ぼす影響の大きさと事故防止の観点から強化されてきた経緯があります。


それでは、具体的な罰則内容を見ていきましょう。


飲酒運転は、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類に分類されています。

アルコール量からみた「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の違いは、次のとおりです。


  • 酒酔い運転
    呼気中アルコールの濃度にかかわらず、アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態
  • 酒気帯び運転
    呼気中にアルコール濃度が道路交通法における基準値の0.15mg/Lを超えている状態で運転をしていた場合

酒気帯び運転はさらに2段階に分かれています。

呼気中アルコール濃度が「0.15mg/L以上0.25mg/L未満」と「0.25mg/L以上」の状態があり、たくさん飲酒している後者が罰則は重くなります。


0.15mg/L未満であれば絶対に大丈夫かと言うと、そうではありません。

呼気中アルコール濃度がたとえ0.15mg/L未満でも、アルコールが原因で正常に運転が出来ない状態に該当した場合、酒酔い運転とみなされる可能性があります。


運送事業者の場合、点呼時にドライバーに対して「酒気帯びの有無」を確認することが義務付けられています。

アルコールチェックでは、数値が0.15mg/L未満であるか否かは考慮されません。

つまりドライバーからアルコール分が微量でも検知された時は、運行管理者はそのドライバーに乗務をさせてはいけないということになります。


以上を踏まえて、ここでは2024年7月時点の飲酒運転にかかる罰則規定について見ていきましょう。

ドライバーに対する罰則

飲酒運転を行ったドライバーには厳しい罰則が課されます。

飲酒運転は重大な交通事故を引き起こす可能性が高いため、厳しい罰則を課すことで抑止効果を期待しています。例えば、飲酒運転が発覚した場合、免許の停止や取り消し、罰金、さらには懲役刑が科されることがあります。また、交通事故を起こした場合は賠償金が発生することもあります。


現在のドライバーに対する行政処分の内容は、次のとおりです。

左右にスライドすると表を見ることができます

呼気1リットル中の
アルコール濃度
交通
違反点数
行政処分
(免許証)
刑事罰
酒気帯び運転 0.15mg/L以上
0.25mg/L未満
13点 免許停止90日

※前歴及びその他の累計点数がない場合

3年以下の懲役又は
50万円以下の罰金
酒気帯び運転 0.25mg/以上 25点 免許取り消し
(欠格期間2年)
3年以下の懲役又は
50万円以下の罰金
酒酔い運転 規定なし
(無条件)
35点 免許取り消し
(欠格期間3年)
5年以下の懲役又は
100万円以下の罰金

【出典】:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警視庁(参照2024-07-19)


欠格期間とは、運転免許が取り消された場合、運転免許を再度受けることができない期間のことです。


また道路交通法は飲酒運転に対する取り締まりを強化しており、ドライバーの呼気中のアルコール濃度が基準値を超える場合、即座に厳しい処罰が科されることになります。具体的には、呼気中のアルコール濃度が0.15mg以上の場合、違反点数が加算され、基礎点数に基づいて免許の取り消しや処分が行われます。状況によっては、飲酒運転だけでなく、同乗者や酒類提供者にも罰則が適用される場合があります。周囲の人も運転免許の有無にかかわらず飲酒ドライバーと同様に厳しく罰せられるほか、免許保有者は免許停止または免許取り消しになる可能性があります。飲食店も処罰の対象となるので、酒類を提供する際には注意が必要です。

左右にスライドすると表を見ることができます

ドライバーが酒酔い運転を
した場合
ドライバーが酒気帯び運転を
した場合
車両提供者 5年以下の懲役又は
100万円以下の罰金
3年以下の懲役又は
50万円以下の罰金
酒類提供者
車両の同乗者
3年以下の懲役又は
50万円以下の罰金
2年以下の懲役又は
30万円以下の罰金

【出典】:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警視庁(参照2024-07-19)


また自動車運転の悪質性や危険性等の実態に応じた処罰を行えるよう「自動車運転死傷処罰法」が成立し、平成26年5月に施行されました。


そこでアルコール等の影響により正常な運転が困難な状況で人を死傷させた場合には、従来の危険運転致死傷罪より刑を軽減した、新しい「危険運転致死傷罪」が新設されています。

従来の「自動車運転過失致死傷罪」が刑法から移され、「過失運転致死傷罪」として規定されていることも知っておきましょう。


なお加入が義務付けられている自賠責保険においては、飲酒運転で事故を起こした当事者は補償適用の対象外です。

被害者は、保険制度における被害者救済の観点から、補償対象となります。

事業者に対する行政処分

「事業用自動車総合 安全プラン2009」(平成21年3月)を踏まえ、自動車運送事業の飲酒運転等に対する処分強化がなされました。

現在の事業者に対する行政処分の内容は、次のとおりです。

行政処分
事業者が
飲酒運転等を
下命・容認した場合
14日間の事業停止
飲酒運転等+
重大事故に係る
指導監督義務違反の場合
7日間の事業停止
飲酒運転等に係る
指導監督義務違反の場合
3日間の事業停止
飲酒運転等に
対する処分
(旅客自動車運送事業、貨物自動車運送事業)
初違反:
100日車の車両使用停止
再違反:
200日車の車両使用停止

このように、従業員が飲酒運転を行った場合、事業者も厳しい行政処分の対象となります。

これは事業者が従業員の管理責任を負っており、公共の安全を確保するために必要だからです。例えば、飲酒運転が発覚した場合、事業許可の取消しや営業停止などの処分が下されることがあります。


事業者は従業員の飲酒運転防止のために、アルコール検知器の導入や定期的な教育を実施する必要があります。

飲酒運転事故(酒気帯び運転)と罰則について コラム3画像

アルコール検知器の精度について

点呼時にドライバーのアルコールチェックを行う際に使用するアルコール検知器の精度は重要です。
アルコール検知器は、飲酒運転防止のための重要なツールですが、その精度には大きな差があります。

今回は、その精度について詳しく解説します。


アルコール検知器の精度は、メーカーや使用されているセンサーの種類によって異なります。

適切な製品選びと管理が、飲酒運転の防止に直結します。


正確なアルコール検知ができないと、飲酒運転を確実に取り締まることができず、重大な事故を防ぐことが難しくなります。例えば、精度の低いアルコール検知器を使用すると、少量のアルコール摂取やタバコの煙などで誤検知する可能性があります。このような誤検知により、無実の人が処罰されたり、逆に飲酒ドライバーが見逃されるリスクがあります。飲酒運転に関わる重い罰則を受けない為にも、点呼時にドライバーのアルコールチェックを行う際に使用するアルコール検知器の精度は非常に重要です。


アルコール検知器の精度は内部のアルコールを検知するセンサーによって変わります。
センサーは「電気化学式センサー」と「半導体式センサー」の2種類に大別されますので、それぞれの特徴を押さえておきましょう。

各センサーの特徴は下記のとおりです。

各センサーの特徴

電気化学式センサー

  • アルコール以外の成分で反応することが少ない
  • 外気の環境の影響は受けにくい
  • 校正間隔が長い
  • 製造コストが高い

半導体式センサー

  • 製造コストが安い(安価で購入しやすい)
  • 安定性・再現性が高くない
  • 経年変化が大きく、使い捨てが基本となる

※特徴は一般的な内容で製造メーカーによって異なることがあります。


点呼業務で使用するアルコール検知器は、再現性が高く、誤検知の少ない「電気化学式センサー」がおすすめです。

またGマークを取得している事業者なら、IT点呼や遠隔点呼と連動できるタイプのアルコール検知器をおすすめします。


IT点呼キーパーは、IT点呼・遠隔点呼・対面点呼・電話点呼・スマホ点呼を一元管理できる総合クラウド点呼システムです。点呼結果はクラウドサーバー上に自動保存されるので、虚偽報告の防止が可能です。さらに点呼結果をデジタル化して一元管理することで、離れた拠点の点呼記録もリアルタイムで確認できます。

安心安全な点呼管理を実現したいという運送事業者の方は是非ご覧ください。


IT点呼キーパーが対応しているアルコール検知器は「電気化学式センサー」を搭載した検知器が多いです。

毎日検知器を活用する運送業の方向けに、誤検知が少ない検知器を採用しています。

据置型、携帯型など、お客様の運用に応じて検知器をお選びください。

フィガロ技研株式会社

左右にスライドすると表を見ることができます

製品名 センサー 設置方法 パソコンに記憶 特徴
FuGo-Pro
FALC-11
電気化学式
センサー
据置型
携帯型
  • ハンディタイプ、据置記録型・遠隔地管理用いずれの使い方も可能
  • 本体機器に検査結果を2,500件まで記憶

株式会社東洋マーク製作所

左右にスライドすると表を見ることができます

製品名 センサー 設置方法 パソコンに記憶 特徴
AC-015
AC-015BT
電気化学式
センサー
携帯型
  • パソコン管理対応タイプとスマートフォン接続タイプの2タイプ
  • 各社デジタルタコグラフとも連動(一部メーカーを除く)
AC-011IT 半導体&
電気化学式
センサー
据置型
  • 半導体センサー・電気化学式センサーの両方を搭載
  • スピーディーな連続検査の点呼に優れている半導体センサーでチェック
  • アルコール反応があった場合は、より正確な電気化学式で最終確認
飲酒運転事故(酒気帯び運転)と罰則について コラム4画像

運送業界の業務効率化について

自動車運送事業は、国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な存在です。

その一方で、2024年問題・2030年問題などのドライバー不足が深刻化しており、働き方改革を通じた業務効率化が急務となっています。ソフト・ハード両面から総力を挙げて事故の削減に取り組み、政府を挙げた働き方改革の推進が必要とされています。効率の悪い業務が多いことで、時間およびコストが過剰にかかり、顧客満足度も低下します。


これらに対処するためには、最新のテクノロジーを活用したITツールを導入することが効果的です。例えば、クラウド管理システム「IT点呼キーパー」なら、インターネット回線を利用してビデオ通話で離れた場所とのアルコール測定・点呼を行うことが可能です。


点呼結果の自動保存機能による不正防止効果が期待できるほか、点呼簿のデジタル化により点呼記録の作成・管理工数を削減することが可能です。さらに、点呼のためだけに離れた事務所へ移動する時間を削減することも可能です。


現場と管理部門どちらにとっても導入メリットのある点呼システムを導入することで、長時間労働の解消・労働環境の改善・従業員のモチベーション向上や離職率の低減などの効果が期待できます。


IT点呼の導入により、点呼業務の時間を約66%削減※することが可能になります。

人手不足が深刻化しているトラック運送業界だからこそ、これまでの業務を見直しIT点呼を導入してみませんか?

※3拠点で24時間稼働を行っているGマーク取得企業の場合


行政の飲酒運転に対する方針や対策への取り組みは緩和ではなく、年々強化傾向になっています。

本記事が、今一度、飲酒運転防止の社内活動へ取り組むきっかけとなれば幸いです。


【出典】
2024年2月22日 事業用自動車の飲酒運転の状況とその対策について|国土交通省(参照2024-07-19)
事業用自動車総合安全プラン2020|国土交通省(参照2024-07-19)
事業用自動車総合安全プラン2009|国土交通省(参照2024-07-19)
みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警視庁(参照2024-07-19)
自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正について|国土交通省(参照2024-07-19)
アルコール分解速度を考えよう|京都産業保健総合支援センター(参照2024-07-19)

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