飲酒運転による事業用自動車ドライバーの事故件数の状況(2024年7月時点)
飲酒運転は非常に重大な社会問題であり、特に事業用自動車ドライバーにとって、従業員が飲酒運転事故を引き起こした際の社会への影響は一層深刻です。事業用自動車は業務上、多くの人や物を運ぶ役割を担っており、そのドライバーによる飲酒運転は非常に危険性が高いため、飲酒運転の抑制が極めて重要です。
また、飲酒量の多少にかかわらず、アルコールは脳の機能を麻痺させます。一般的に体内に取り込まれたアルコールの分解には、1日の適量(ビール・発泡酒の中ビン1本程度)でさえ、男性は平均で2.2時間、女性は3時間かかるそうです。分解速度には個人差があることから、「自分は少ししか飲んでいないから大丈夫」という過信や油断は禁物だといえます。そのため翌朝に運転業務を控えている場合は、深夜の飲酒を控えるなどの対策を徹底することが大切です。
飲酒の運転操作等への主な影響は、次のような点が挙げられます。
- 安全運転に必要とされる「情報処理能力」「注意力」「判断力」が低下する
- 危険の察知が遅れたり、危険を察知してからブレーキペダルを踏むまで時間がかかったりする
- 気が大きくなり、速度超過などの危険運転をしてしまう
事業用自動車ドライバーの飲酒運転による事故件数(2024年7月時点)
ここでは、2024年7月時点での飲酒運転による事業用自動車ドライバーの事故件数について詳しく解説します。
左右にスライドすると表を見ることができます
2010 平成22年 |
2011 平成23年 |
2012 平成24年 |
2013 平成25年 |
2014 平成26年 |
2015 平成27年 |
2016 平成28年 |
2017 平成29年 |
2018 平成30年 |
2019 令和元年 |
2020 令和2年 |
2021 令和3年 |
2022 令和4年 |
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事業用全体 | 71 | 64 | 46 | 51 | 49 | 53 | 54 | 45 | 40 | 56 | 36 | 35 | 37 |
トラック | 56 | 55 | 39 | 40 | 42 | 49 | 48 | 41 | 34 | 48 | 36 | 32 | 34 |
タクシー | 14 | 8 | 7 | 11 | 7 | 4 | 6 | 4 | 6 | 8 | 0 | 3 | 3 |
貸切バス | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
乗合バス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
【出典】:2024年2月22日 事業用自動車の飲酒運転の状況とその対策について|国土交通省(参照2024-07-19)
事業用自動車による飲酒運転事故件数は、2012年(平成24年)以降横ばいの状況が続いており、削減目標である「飲酒運転ゼロ」は未だ達成できていません。
飲酒運転による事業用自動車の交通事故は、2022年(令和4年)は37件も発生しました。
この37件の飲酒運転事故のうち、34件がトラック運転手によるものでした。
これは、トラックドライバーの業務が深夜や長時間に及ぶことが多く、ドライバーが疲労やストレスを感じる結果、酒に依存しやすい環境にあるからといわれています。
例えば、ある運送業者では、夜間の長距離運転中に飲酒をしてしまい、重大な交通事故を引き起こした事例があります。このように安全管理が不十分な事業者においては、社会的影響の大きい死亡事故が発生する確率が高くなります。さらにこのような事故は、企業にとっても社会全体にとっても大きな損害をもたらします。交通事故による被害者の救済費用や、会社の信用の失墜、保険金請求、そして交通事故による死者数の増加など、多岐にわたる負の影響が連鎖的に発生します。
そもそも運送業界では交通安全教育の実施はもちろん、ドライバーに対し運転前のアルコールチェックが義務付けられていることから、飲酒運転は避けられるはずです。基本的に「飲酒運転を絶対にしない、させない」という意識が大切なのに、トラック業界で飲酒運転が起きてしまう理由は何か。運行時の現場の実態を調査するなど、運送業界全体であらためて考えていく必要があるでしょう。
事業用自動車のドライバーが飲酒運転をしないようにするためには、厳格なアルコールチェックと、ドライバーへの啓発が重要です。例えば、夜間勤務者への特別な注意喚起を行うなどの対策が考えられます。また、飲酒運転の危険性を理解してもらうため、教育研修やハンドルキーパー運動などの啓発活動を行うことも効果的です。
このように厳格な対策と従業員への教育を徹底することで、悲惨な事故を防ぎ、運送業界全体の安全を高めることができます。