事業用自動車の事故防止のための点検ポイント|IT点呼キーパー

事業用自動車の事故防止のための点検ポイント

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  • 業務で旅客や貨物を預かり移動するトラックやバス、タクシーなどは、事故に遭遇すると社会的に大きな影響を与えます。スムーズな運行と重大事故防止のために、運送事業者が行うのが車両の日常点検や定期点検です。


    本記事では、自家用と事業用の違い、事業用自動車の事故や飲酒運転状況のほか、今後の事故防止対策として点検ポイントについて説明します。

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そもそも事業用自動車とは

事業用自動車とは、運送業や旅客業で用いられる自動車のことで、道路運送法で規定されています(同法第2条8項)。具体的には、運賃を受け取って業務を行う宅配便のトラックやタクシー・路線バスなどのことです。


事業用自動車の登録車両には緑地に白字のナンバープレートがついているので、自家用自動車と識別しやすいでしょう。ナンバープレートは、大型・小型・業務用などの車種を簡単に識別できるほか、不審者の特定などに役立つため、全ての車両への取り付けが義務付けられているのです。


事業用自動車はそのナンバープレートの色から、緑ナンバー、営業用自動車、あるいは業務用トラックなどと呼ばれています。


なお個人の軽自動車を使用して運送業を営む貨物軽自動車に適用されるのは、黒地に黄色の文字の黒ナンバーです。

自家用と事業用の違い

事業用自動車以外は、全て自家用自動車に分類されています。よく耳にする白ナンバートラックとは、自社製品や商材を荷物として運ぶトラックの意味です。


運搬物が自社のものなら自家用、運賃をもらって他社のものを運搬するのであれば事業用という違いがあります。


他にも自家用と事業用の違いといえば、登録の際に車庫証明が不要な点です。代わりに、法人を設立して運送業許可を取得すると「事業用自動車等連絡書(以下、連絡書)」が交付されます。


この連絡書を受け取ってはじめて、白ナンバーから緑ナンバーへ車検証の書き換えが可能になるわけです。


運送業許可とは一般貨物自動車運送事業を行うための許可のことであり、一般貨物自動車運送事業については、貨物自動車運送事業法で規定されています(同法第2条第1項)。


一般貨物自動車運送事業とは、特定の荷主だけでなく複数の荷主を対象とした事業のことです。


白ナンバーから緑ナンバーへ車検証を書き換える手続きは、次のとおりとなります。


  • 連絡書に車検証を添えて、営業所のある地域を管轄する運輸支局の輸送担当窓口に提出

なお新車の場合は、諸元表を添付するようにします。

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近年の事業用自動車の交通事故状況

国土交通省がまとめた「最近の交通事故発生状況」によると、令和3年(2021年)中に発生した人身事故件数は305,196件でした。


そのうち、事業用自動車が第一当事者である人身事故の件数は22,027件です。事業用自動車のプラン2025削減目標が16,500件以下に設定されていることから考えると、さらなる安全対策が必要といえるでしょう。


内訳を見ると、タクシーおよびバス(乗合・貸切)の事故件数は前年に比べて減少しています。バス(乗合・貸切)においては、プラン2025削減目標もクリアしている状況です。


なおプラン2025とは、交通政策の中でも安全政策をメインに据え、国土交通省が事故削減目標を定量的に示した施策パッケージです。プランを策定した「事業用自動車に係る総合的安全対策検討委員会」はフォローアップを実施することがあり、WEB会議システムで傍聴できます。

トラックは事故件数・重症者数において増加

一方、トラックの事故件数は前年より増加してしまいました。これは、貨物軽自動車による事故件数が増加傾向にあるからです。


しかもトラックが関連した交通事故の重症者数は1,282人(前年比179人増)と、大幅な増加が見られました。貸切バスは減少、乗合バス・タクシーは前年と同水準だったことから見ると、大幅増は残念な結果です。


なお令和3年中(2021年)に発生した、事業用自動車による交通事故死者数は249人でした。交通事故全体の死者数は2,636人だったことから考えると、全体の1割弱が事業用が関連する死者数、9割以上が乗用車など自家用に関連する死者数ということになります。

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近年の事業用自動車の飲酒運転状況

事業用自動車の飲酒運転事故の状況を見ると、30〜50件前後を横ばいで推移しています。平成24年(2012年)までは順調に減少していたものの、それ以降はあまり変化が見られません。


プラン2025削減目標では、飲酒運転ゼロを掲げています。しかし目標達成まで程遠く、問題解決のための何らかの対策が必要といえるでしょう。


すでに遠隔点呼や緑ナンバーのアルコール検知器義務化を決定するなどして、飲酒運転の根絶に向けた取り組みが行われてきました。


今後はさらに飲酒運転を未然に防止する取り組みだけでなく、業界全体の根本的な意識改革が必要なのかもしれません。

事業用自動車の事故防止のための点検ポイント コラム3画像

業態別の特徴

ここでは、業態ごとにその交通事故の特徴について見ていきましょう。

乗合バス

交通事故全体に占める乗合バスの割合は、減少傾向にあります。
令和3年には過去最少の780件でした。


乗合バスが関連する事故の中で最も多いのが、303件発生した「車内事故」です。
車内事故は、全体の約4割を占めています。

乗合バスが関連する死亡事故の件数は横ばい傾向にあり、令和3年は8件でした。
中でも「横断中の歩行者との事故」が3件発生し、死亡事故の中で最多となっています。


飲酒運転による事故件数は、平成24年(2012年)から令和3年(2021年)までゼロを維持しています。

貸切バス

交通事故全体に占める貸切バスの割合は、乗合バスと同様に減少傾向にあります。
令和3年には過去最少の92件でした。


貸切バスが関連する事故の中で最も多いのが、22件発生した「追突事故」です。
追突事故は、全体の2割を占めています。

貸切バスが関連する死亡事故の件数は、近年1桁台で推移しており、令和3年は1件でした。
これは右折時に、他車と衝突事故を起こして発生したものです。


飲酒運転による事故件数は、平成24年(2012年)から令和3年(2021年)までゼロを維持しています。

タクシー

交通事故全体に占めるタクシーの割合は、バス(乗合・貸切)と同様に減少傾向にあります。
令和3年には過去最少の7,121件でした。


タクシーが関連する事故の中で最も多いのが、1,421件発生した「出会い頭衝突事故」です。
出会い頭衝突事故は、全体の約2割を占めています。

タクシーが関連する死亡事故の件数も減少傾向にあり、令和3年は過去最少の11件でした。
中でも「横断中の歩行者との事故」が4件発生し、乗合バスと同様に死亡事故の中で最多となっています。

トラック

トラックによる交通事故件数は横ばい傾向を示しており、令和3年は14,031件でした。
トラックが関連する事故の中で最も多いのが、5,683件発生した「追突事故」です。
追突事故は、全体の約4割を示しています。


トラックが関連する死亡事故の件数は減少傾向にあり、令和3年は過去最少の221件でした。
中でも「横断中の歩行者との事故」が58件発生し、乗合バス、タクシーと同様に死亡事故の中で最多となっています。

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今後の対策について

事業用自動車の事故防止に向けた今後の対策は、2つあります。
1つめは日頃からの点検を徹底させること、もう1つは運行前後の点呼業務の徹底させることです。


ではそれぞれについて、見ていきましょう。

事業用自動車の点検

事業用自動車の使用者には、点検および整備の義務があります。ここでは道路運送車両法に定められた日常点検整備および定期点検整備の内容について見ていきましょう(同法第47条2項、第48条)。


日常点検

1日1回、その運行の開始前に日常点検を実施する必要があります。運行において異常が認められた箇所はもちろん、次の項目をチェックしましょう。


  • ブレーキ
  • タイヤ
  • バッテリー
  • 原動機
  • 灯火装置および方向指示器に損傷がないか
  • ウインド・ウォッシャ液量、ワイパー払拭が良好等
  • エアタンクに凝水がないか

整備管理者は運行が可能かどうかを判断するために、運転者に運行の開始前に点検を実施させた結果を報告させるなどして、自動車の状態を確認します。

万が一、不具合があれば運行の中止が発生するため、運行管理者と連携するようにしましょう。


定期点検

3ヶ月ごと及び12ヶ月ごとの2種類の定期点検を確実に実施する必要があります。定期点検整備は、運行において異常が認められた箇所はもちろん、次の項目をチェックしましょう。


  • かじ取り装置
  • 制動装置
  • 走行装置
  • 緩衝装置
  • 電気装置
  • 原動機
  • 動力電動装置
  • ばい煙、悪臭のあるガス等の発散防止装置等
  • マフラー、車枠、車体等

作成した点検整備記録簿は、1年間保存することと定められています。

運行前後の点呼業務の徹底

運行前後の点呼業務は、安全な運行を確保するために必須の業務です。運行管理者は、運転者の体調の確認や必要な指示を行うと同時に、運転者からも報告を受けます。


重大事故を回避するためにも、運転者は疾病・疲労・睡眠等の観点から自身の健康状態について報告しなればなりません。


弊社の「IT点呼キーパー」であれば、インターネットに接続したIT機器を活用することで、離れた営業所と車庫間でも擬似対面点呼を行えます。


運転者の体調および酒気帯びの有無の確認など、パソコン画面を通じて運行管理者と運転者が対面で点呼を行うというものです。


血圧計や体温計と連携させれば、目視による確認に加えて、体温測定・血圧測定結果を取得できるので点呼時の健康状態確認の実効性を高められます。


全日本トラック協会でも、過労死や健康起因事故を防止する目的で運行前の血圧測定を推進しているので検討されてはいかがでしょう。


点呼記録はクラウドに自動的に保存されるので、自身で点呼記録簿を作成する必要もなく、運行管理者の負担を大幅に軽減できます。

まとめ

本記事では、事業用自動車と自家用自動車との違い、事業用自動車の交通事故の状況や今後の事故防止対策として点検や点呼の徹底についてご紹介しました。


弊社の「IT点呼キーパー」であれば、運行管理者様の業務負担を軽減させつつ、点呼時の健康状態確認の実効性を高めることが可能です。


トラック業界は、法令等の改正により大きな変化を迫られています。交通事故防止の取り組みへの緊急要請に応える施策をご検討中の運送事業者様は、ぜひ弊社へご相談くださいませ。


【出典】
よくあるご質問|自動車検査登録情報協会
道路運送法|e-Gov法令検索
貨物自動車運送事業法|e-Gov法令検索
道路運送車両法|e-Gov法令検索
一般貨物自動車運送事業|国土交通省 中部運輸局
最近の交通事故発生状況|国土交通省
「事業用自動車総合安全プラン2025」の目標達成に向けて講じた施策|公益社団法人 日本バス協会
「事業用自動車総合安全プラン2025」達成に向けた国土交通本省の主な取組状況|国土交通省
点検・整備の推進|国土交通省
自動車の点検及び整備に関する手引|国土交通省
「運行管理者のための血圧計活用のポイント」パンフレットの作成について|公益財団法人 全日本トラック協会

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