運送業が抱える課題
長時間労働や低賃金などを背景に、トラック運送業界ではトラックドライバーの人材不足が深刻化しています。ここでは運送業が抱える課題について見ていきましょう。
(1)人材不足・ドライバーの高齢化
トラック運転者の人材不足が深刻化しており、職業としての魅力向上が業界全体の大きな課題です。
全産業と比べて平均年齢が高く、しかも平均年齢の上昇幅が大きいことで知られており、しかも実労働時間数が長く給与額が低い傾向にあることから、担い手が見つかりづらい状況が続いています。
そのため政府は「ホワイト物流」推進運動を展開して、女性や60代以上の運転者等も働きやすい労働環境づくりを目指しているわけです。
(2)労働環境・労働条件の改善
トラックドライバーの労働環境の改善には、トラック運送契約の書面化が必須です。しかし荷主からの個別の運送依頼に柔軟に対応できる運送引受書を作成する人材が不足しており、なかなか進んでいないのが実情だといえるでしょう。
また労働条件の改善については、優越的な地位にある荷主の協力が欠かせません。
運転時間と休憩時間の合計である拘束時間や、休息時間(勤務間インターバル)を定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」を厳格に守りたくても、荷主の要望に応えることを優先していると難しいからです。
さらに働き方改革が推進する「同一労働同一賃金ガイドライン」が盛り込まれた「パートタイム・有期雇用労働法」が、2021年4月から中小企業にも適用されています。
そこで正社員という選択だけでなく誰もが多様な働き方を自由に選択できるように、正規雇用者と非正規雇用者との間に見られる不合理な待遇差や格差を解消する取り組みがトラック業界においても求められているのです。
働き方改革では年5日の年次有給休暇の確実な取得の義務化も導入され、全ト協もアクションプランの中で、ドライバーの処遇改善として給与体系の見直しや年次有給休暇取得促進に努めるとしています。
なお全ト協のホームページでは「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会特設ページ」を開設し取組を公開しているのでチェックしてみると良いでしょう。
(3)勤怠管理の強化
運送業の勤怠管理には、次のような特有の課題があります。
- 不正打刻のリスク
- ドライバーの勤務時間を正確に把握する難しさ
- 運送業の職場では多様な雇用形態や勤務時間が存在し勤怠集計や給与計算のミスが起きやすい
上述のような課題を解決するために、勤怠管理を強化する必要があります。
(4)輸配送効率の向上
非効率がうまれやすく、改善が必要とされる業界特有の課題は次のとおりです。
そこで運送業界では荷主とトラック運送事業者が協力しあって、輸配送の効率化を目指す取り組みをしています。
しかしこれらの課題の解決には、個別の荷主とトラック運送事業者単独の取り組みでは対応が難しいのが現状です。