運送業が巡回指導の対応でやっておくべきこととは?|IT点呼キーパー

運送業が巡回指導の対応でやっておくべきこととは?

法改正・規制
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  • 国土交通省は巡回指導の結果、悪質と見られるトラック運送業者への監査を強化するとし、令和5年4月1日から新しい制度の運用を開始しています。新制度のもとDあるいはEの評価を受けた運送業者数の6割減を目指して、巡回指導の頻度を半年に1回に高めることになりました。


    本記事では、巡回指導の概要やチェック項目のほか、巡回指導への対応を解説します。

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巡回指導とは何か

巡回指導とは、「貨物自動車運送適正化事業実施機関(以下、実施機関)」が貨物自動車運送事業法(第39条)に基づき実施している指導のことです。


実施機関はトラック運送事業者に対して、法令違反せずに事業を実施できているかどうかを38項目に渡り定期的に評価しています。その上で改善指導のほか、適正な事業経営の参考となる情報提供や優良事業所の事例なども紹介しております。


運行管理者は運転者に対し報告を求め安全確保に必要な指示を出すほか、アルコールチェッカー(以下、アルコール検知器)を使用して酒気帯びの有無を確認しなければいけません。


実施機関は地方と全国に分かれており、行政より指定を受けている機関を次に示します。

実施機関 管轄
全国 公益社団法人全日本トラック協会 国土交通大臣より指定
地方 各都道府県トラック協会 地方運輸局長より指定

現場では研修を修了した適正化事業指導員が業務にあたっており、その数は全国で425名です(令和2年3月末現在)。巡回指導は通常の巡回指導と特別巡回指導の2種類に分かれており、それぞれ対象やタイミングが異なります。

対象 タイミング
巡回指導 新規許可事業者以外 通常は、2〜3年に1回程度
改善が必要な事業所を優先的に実施
特別巡回指導 新規許可事業者 運輸開始届出後、1〜3か月程度

巡回指導の総合評価は、A〜Eの5段階です。Aが最高、Eが最低の評価とされ、Cが「ふつう」に該当するので、DとEの評価を受けないように対策することが重要になります。

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巡回指導が必要な理由

トラック運送事業は国内貨物輸送の9割以上 を担っており、国民生活や産業活動を支える公共性の高い事業です。巡回指導にはトラック運送事業が健全に発展するために必要とされる、違法行為を抑制し輸送秩序を確立する効果があります。


巡回指導によるアドバイスを日頃の事業活動に活かせば、運輸局や運輸支局による監査によって行政処分を受けるリスクを未然に防止できる点がメリットです。監査は無通告で実施されるケースが多いので、できるだけ早く巡回指導時に指摘された点を改善しておくようにしましょう。

国土交通省による監査の強化

実際に国土交通省は、悪質なトラック運送業者への監査を強化することにしました。そこで令和5年3月28日付けで通達「トラック事業者の法令順守の徹底を図るための措置について」が一部改正され、令和5年4月1日から施行されています。改善が見られない悪質な事業者への巡回指導を重点化する方針です。


行政の監査が強化される対象は、巡回指導の総合評価がD(準最低)あるいはE(最低)となった次のようなトラック運送業者となります。


  • 適正化事業実施機関による巡回指導の総合評価がDまたはE評価の事業者で、改善期限までに改善結果報告を提出しない事業者
  • 令和5年4月1日以降に実施する巡回指導の総合評価が3回連続DまたはE評価の事業者
  • 令和5年3月末時点で過去3回の巡回指導の総合評価がE評価の事業者

新制度では、上記のようなトラック運送業者に対する2回目の巡回指導は半年後に実施されます。それでも総合評価がDあるいはEの場合には、さらにその半年後に3回目の巡回指導が行われるというものです。

従来の制度との違い

従来は総合評価がDあるいはEとなった事業者に対し、都道府県トラック協会は運輸支局に改善報告を提出させた上で2〜3年後を目処に2回目の巡回指導を実施してきました。しかしこれでは次の巡回指導を実施するまでの間に、悪質な事業者の改善状況を適切なタイミングで再チェックできません。


今後は都道府県トラック協会からの報告を受けた運輸支局は、速やかに監査を実施します。新制度の運用においては、より悪質な事業者を優先して監査することも可となりましたので、トラック運送業者はD評価あるいはE評価にならないよう一層の注意が必要です。

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巡回指導のチェック項目の紹介

巡回指導の項目は、次の7区分38項目となります。


  1. 事業計画等
  2. 帳票類の整備、報告等
  3. 運行管理等
  4. 車両管理等
  5. 労働法等
  6. 法定福利費
  7. 運輸安全マネジメント

ここでは、それぞれの区分ごとに38項目について見ていきましょう。

事業計画等

  • 主たる事務所及び営業所の名称、位置に変更はないか。
  • 営業所に配置する事業用自動車の種別及び数に変更はないか。
  • 自動車車庫の位置及び収容能力に変更はないか。
  • 乗務員の休憩・睡眠施設の位置、収容能力は適正か。
  • 乗務員の休憩・睡眠施設の保守、管理は適正か。
  • 届出事項に変更はないか。(役員・社員、特定事業者に係る運送の需要者の名称変更等)
  • 自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白トラの利用等)はないか。
  • 名義貸し、事業の貸渡し等はないか。

帳票類の整備、報告等

  • 事故記録が適正に記録され、保存されているか。
  • 自動車事故報告書を提出しているか。
  • 運転者台帳が適正に記入等され、保存されているか。
  • 車両台帳が整備され、適正に記入等がされているか。
  • 事業報告書及び事業実績報告書を提出しているか。(本社巡回に限る。)

運行管理等

  • 運行管理規程が定められているか。
  • 運行管理者が選任され、届出されているか。
  • 運行管理者に所定の講習を受けさせているか。
  • 事業計画に従い、必要な運転者を確保しているか。
  • 過労防止を配慮した勤務時間、乗務時間を定め、これを基に乗務割が作成され、休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか。
  • 過積載による運送を行っていないか。
  • 点呼の実施及びその記録、保存は適正か。
  • 乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正か。
  • 運行記録計による記録及びその保存・活用は適正か。
  • 運行指示書の作成、指示、携行、保存は適正か。
  • 乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか。
  • 特定の運転者に対して特別な指導を行っているか。
  • 特定の運転者に対して適性診断を受けさせているか。

車両管理等

  • 整備管理規程が定められているか。
  • 整備管理者が選任され、届出されているか。
  • 整備管理者に所定の研修を受けさせているか。
  • 日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っているか。
  • 定期点検基準を作成し、これに基づき、適正に点検・整備を行い、点検整備記録簿等が保存されているか。

労働法等

  • 就業規則が制定され、届出されているか。
  • 36協定が締結され、届出されているか。
  • 労働時間、休日労働について違法性はないか。(運転時間を除く)
  • 所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正にされているか。

法定福利費

  • 労災保険・雇用保険に加入しているか。
  • 健康保険・厚生年金保険に加入しているか。

運輸安全マネジメント

  • 運輸安全マネジメントの実施は適正か。
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点呼業務なら「IT点呼キーパー」にお任せください!

上述のとおりチェックされる38項目に渡り、巡回指導時に運送会社は数多くの書類を準備 する必要があります。中でも巡回指導における重要チェックポイントの1つは、点呼簿・日報などの運行管理書類です。


トラック運送業者には原則、対面点呼が義務付けられていることから、指導員は点呼が適正に実施され記録されているかを重点的に確認 します。帳票類を用意できなければ指摘事項に該当し、指導員が発行する「改善指導通知書」に則り文書で改善報告を提出する必要がでてくるので注意しましょう。


そこでおすすめは、クラウド管理で業務を効率化することで人的負担を軽減し、さらに虚偽報告を防止できる「IT点呼キーパー」です。


IT点呼キーパーなら、点呼の品質はもちろん点呼簿の品質を向上できます。点呼簿管理時間や点呼簿作成時間の削減につながるほか、点呼結果・点呼記録簿をいつでもどこでも確認・出力できるので突然の監査にもスムーズに対応可能です。


運行管理者は車庫に行かずとも営業所から、ドライバーと顔を見ながらIT点呼を実施できます。またドライバーにとってもメリットが大きく、対面点呼のために離れた営業所まで向かう時間を削減可能です。

まとめ

国土交通省の貨物自動車運送適正化事業の実施機関である全日本トラック協会は、令和5年度から低評価が続くトラック事業者に対する巡回指導を強化しています。新制度では、巡回頻度を半年に1回に短縮するほか、低評価が続けば国土交通省に報告し監査を促す仕組みです。


巡回指導では数多くの書類を準備する必要がありますが、運行管理者様の負担軽減に役立つのが「IT点呼キーパー」となります。導入費用も月額費用も、業界きっての低価格でご提供しておりますので、点呼の品質向上をご検討中の一般貨物自動車運送事業者様はぜひお問い合わせくださいませ。


【出典】
適正化事業の概念|全日本トラック協会(参照2023-05-19)
適正化事業実施機関|一般社団法人千葉県トラック協会(参照2023-05-19)
「D」、「E」の評価営業所に係る巡回指導の重点化について【適正化指導部】|公益社団法人長野県トラック協会(参照2023-05-19)
トラック事業者の法令遵守の徹底を図るための措置について|一般社団法人高知県トラック協会(参照2023-05-19)

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