点呼とトラック運行指示書のポイントを解説
  
    法改正・規則
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- 2016年1月に発生した軽井沢スキーバス転落事故では、運行前点呼を実施しておらず、会社がドライバーに渡していた運行指示書には出発地と到着地のみしか記載されていないなどの杜撰な運行管理が明るみに出て大きな問題になりました。 
 - 国土交通省では、軽井沢スキーバス事故を受け、緊急対策として全国の貸切バス事業者計310事業者を対象に集中監査を実施した結果、何らかの法令違反を確認した事業者数240(77.4%)、そのうち「運行指示書の作成等が不適切」として96事業者(31.0%)で記載内容や携行に問題があることが分かりました。 
 - 一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)のみではなく、一般貨物自動車運送業(トラック)においてもドライバーや歩行者の安全を守り悲しい事故を防ぐ為にも、無理のない運行計画を行うこと、運行の安全に係る指示について確実にドライバーに伝達させるよう運行指示書を作成することが重要になります。 
 - 本記事では、一般貨物自動車運送事業における運行指示書の書き方・運行指示書の作り方のポイントなどを分かりやすく解説します。 
        トラックの運行指示書とは?
        「運行指示書」とは、運行日時、目的地到着予定時刻、経路及び経由地の日時、休憩場所及び休憩時間等、運行にあたっての計画が記された書類のことです。
        一般貨物自動車運送業(トラック)は、長距離輸送などの理由により、対面による乗務前点呼・乗務後点呼の両方を行うことができない場合は、乗務前・乗務後のほか、乗務の途中に少なくとも1回の点呼を行うことが義務付けられています。運行管理者は、48時間を超える中間点呼を必要とする勤務(2泊3日以上の運行)の場合は、運行指示書(正)(副)を作成し運転者に運行指示書(正)を携行させなければなりません。
        しかし、48時間を超えない貨物運行でも、時間の変更を理由に出発も到着も対面点呼が出来なくなった場合や、運行内容の変更で48時間を超える運行になってしまう場合は、ドライバーに連絡したうえで、運行指示書を運行管理者が作成しなくてはなりません。
        ※一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)の場合は48時間以内の運行、つまり日帰りや1泊2日の運行であっても、すべての運行において必要となります。
       
    
    
      
      
        トラックの運行指示書に記載する内容
        運行指示書の記載事項は、貨物自動車運送事業安全規則(運行指示書による指示等)で決められており、第9条3項に運行指示書に記載しなければならない7つの項目が記載されています。
       
      
        
          - 運行の開始及び終了の地点及び日時
- 乗務員の氏名
- 運行の経路並びに主な経過地における発車及び到着の日時
- 運行に際して注意を要する箇所の位置
- 乗務員の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合に限る)
- 乗務員の運転又は業務の交替の地点(運転又は業務の交替がある場合に限る)
- その他運行の安全を確保するために必要な事項
 
    
    
      
      
        
運行中に変更が生じたときのポイント
      
        運行指示書を携行している場合
        運行管理者は、運行計画に変更が生じた場合、変更内容を「運行指示書(副)」に記入するとともにドライバーに指示を行います。同時にドライバーは、変更内容を「運行指示書(正)」に記入するとともに「運行指示書(正)」を携行します。
        ドライバーに対して指示を行った日時及び運行管理者の氏名については「運行指示書 (正)(副)」に記載しなければなりません。
        運行指示書を携行していない場合
        運行管理者は、「運行指示書(正)(副)」を作成しドライバーに対して電話その他の方法で適切な指示を行わなければなりません。この場合、ドライバーは「運行指示書(正)」を携行していないので、乗務等の記録(運転日報等)に指示の内容を記載しなければなりません。
        また、運行管理者はドライバーに指示した内容・日時及び運行管理者の氏名を「運行指示書(正)(副)」に、そしてドライバーは乗務等の記録(運転日報等)に同様の記載をしなければなりません。
        連続運転時間
        連続運転時間は4時間が限度です。運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断して30分以上の休憩を確保しなければなりません。ただし、運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断する場合の休憩等については、少なくとも1回につき10分以上としたうえで分割することができます。
    
    
      
      
        運行指示で気を付ける労働時間のポイント
        厚生労働省では、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号。以下「改善基準」といいます。)を定め、トラックドライバーについては一般労働者とは異なる労働時間や運転時間、休息時間などの特別の規制を設けています。
       
        拘束時間
        拘束時間については、ドライバーの健康や安全に配慮して1日、1か月について限度が定められています。
        1か月原則293時間まで
        例外 労使協定があるときは1年のうち6か月までは、1年間の拘束時間が3,516時間(293時間×12か月)を超えない範囲内において、1か月の範囲内で320時間まで延長することができる。
        1日原則13時間まで
        拘束時間を延長する場合でも最大拘束時間は16時間。ただし1日の拘束時間が15時間を超える場合は1週間に2回以内が限度。
        休息期間
        休息期間は、原則として1日に8時間以上連続して与える必要があります。
        ※特例 一定の要件下で休息時間を分割して与えることが認められています。
        
          
            - 分割休息の回数
 一定期間(原則2週間から4週間程度)の全勤務回数の2分の1が限度
- 休息期間の長さ
 1日1回当たり継続4時間以上合計10時間以上
 
        ※詳しくは、厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」をご確認ください。
        連続運転時間
        連続運転時間は4時間が限度です。運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断して30分以上の休憩を確保しなければなりません。
        ただし、運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断する場合の休憩等については、少なくとも1回につき10分以上としたうえで分割することができます。
    
    
      
      
        運行指示書の保管義務について
        「運行指示書(正)(副)」は、営業所に置いておき、運行終了後に乗務等の記録(運転日報等) とともに保存しておきます。
        運行指示書及びその写しは、運行終了日から1年間保存しなければなりません。
    
    
      
        まとめ
        トラック輸送は、電気、ガス、水道といった公共サービスのように、消費生活や生産活動にとって欠くことのできない社会的なインフラとなっています。しかしながらトラック運送業界では、取引先顧客からの短納期の要請、長距離運転等の業務の特性から、ドライバーの長時間労働が常態化しており、生活の質の低下を招くことによる体調不良などが重大交通事故の遠因にもなっています。
        2018年に働き方改革関連法が成立し、2019年4月から改正労働基準法が全産業を対象に施行されました。中小企業においても、2020年4月より時間外労働の上限規制が始まりました。トラックドライバーにおいても、2024年4月から年960時間の時間外労働の罰則付き上限規制が適用されます。
        罰則付き上限規制が適用には猶予期間があるといはいえ、運行管理者は法令遵守と無理のない運行予定を計画すること、運行の安全に係る指示について確実にドライバーに伝達させることは、今後ますます求められるようになってくることでしょう。
        安全運行に不備はないのか?運行指示は適切だったのだろうか?ドライバーの点呼結果と運行指示書を照らし合わせその運行計画に無理はないだろうかと再度点検してみてはいかがでしょうか。
        
        
          【出典】
          軽井沢スキーバス事故を受けた集中監査の実施結果(速報)について|国土交通省
          
          運行管理業務と安全マニュアル|社団法人全日本トラック協会
          
          トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省
        
       
    
    
     
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